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日本一ワクワクする菓子屋がつくる「ブラックサンダー」、全社売上4倍増の裏側、有楽製菓 河合辰信
役職の隔てなく相談できる環境を作ると個人は成長する
――お菓子へのこだわりは公式ホームページを見ても分かります。味のバリエーションを並べるだけでなく、開発秘話も書かれていますが、そのようなアイデアは社内でどのように出てくるのでしょうか?特にルールはなく、基本ボトムアップでアイデアが出てきます。新商品や企画を考えるサイクルは大体同じで、小売業者や季節に合わせて、棚のつくり方、アイデア出しのタイミングは決まっているので、ルーティンの中で担当メンバーが案を出しています。
コンセプトについては、事前にラインアップ案を私も含めて議論やフィードバックを重ね、担当者が商品企画を生み出していく。出てきたアイデアをもとに、誰に向けた商品でいつ食べてもらうのか、インサイトの深堀をする、担当者と私とのキャッチボールが数回続いて決定していくのです。
――時間をかけて顧客目線でアイデアを全社で考えていますね。
ジャンドゥーヤ味の開発秘話もそうですが、「顧客視点で想像してみるんだ」と担当に伝えたのです。そうしたら、担当者が自分で世界観に入り込んで、どういう気持ちでどんな音楽をかけて、どんな場面で食べるかを考えてきたのです。
(優雅な余韻ジャンドゥーヤの誕生裏話)
それに対して、違うと思ったことは、双方納得するまでキャッチボールを繰り返す。社員が社長とフランクに相談できる環境は、有楽製菓の良いところだと思っています。
――社風がなんとなく伝わってきます。
トップダウンにならないよう、聞かれたら答えを言わず「君ならどう思う?」と考えさせる、そうするともう一度私の元に相談しに来てくれるんです。そんなフラットな環境が個人と会社を成長させると思って実行しています。
――経営者でもあり、マーケターでもある河合社長は、これから有楽製菓をどのような会社にしていきたいですか?目指したい人物像はありますか?
まずマーケターとして目指したい、尊敬している人物のお話から。素晴らしいマーケターはたくさんいらっしゃるのですが、憧れの人が2人います。
ひとり目は足立光さんです。整理された思考と組み上げられたロジックにパッションを乗せ、何よりも結果を出されているところが尊敬できる点です。
2人目は、昨年のネプラス・ユー2020でもご一緒に登壇しましたが、鹿毛康司さんです。顧客の心への入り込み方、心の解釈の仕方が、私の実践したいマーケティングとすごくシンクロしています。言葉選びもそうですが、人の心への寄り添い方はナンバーワンだと感じています。
私は経営者としてはまだまだ“ひよっこ“で、経営者として皆さまに偉そうにお話できることはほとんどないのですが、事業承継に関していえば、すごくスムーズにできたと思っています。唯一自慢できることかもしれません。
私が考える事業承継の秘訣は、お互いを信頼し尊重し合うことだと思います。私は父とぶつかることはあっても、リスペクトを忘れたことはありません。仮に過去のやり方が間違っていると感じても、過去を否定しても何も変わらないので、いま何をすべきかを考え、未来に向けて建設的に議論していくことが大事だと思っています。ありがたいことに、父も私に対し一定のリスペクトを持ち、新しいやり方を見守ってくれているため、双方の思いがあって事業承継がうまくいったと思っています。
私は有楽製菓を「日本一ワクワクする菓子屋」にしたいと思っています。全てのステークホルダーに対してワクワクを提供し、この会社が日本にあってよかったと思ってもらえる会社にすることが目標です。そのためには、有楽製菓で働いてくれている従業員の皆さんがワクワクして働ける環境にする必要があると考え、社内の環境整備を進めています。
全社一丸となって「日本一ワクワクする菓子屋」を目指し、その中で誰よりもワクワクして働く経営者でありたいと思っています。
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