売れるモノにはワケがある。PR目線で読み解くヒットの構造 #03

Supremeのコラボはなぜ人気?異業種コラボのPR効果を再考【ラウツマ 松浦隆】

異業種コラボで、新たなステージへと上がったTENGA

 「コラボ」をキーワードに、私がTENGAに勤務していた時代を振り返ってみると、今から8年前、2010年にアパレルブランド5社と組んだ「RESPECT YOURSELF PROJECT」という活動が思い出されます。

 当時、ファッション業界ではコラボがすでに活発に行われていて、「TENGAもファッションブランドとコラボできないかなぁ」と、漠然と想像していました。当然ながら、アダルトグッズ業界とファッション業界が手を組むなど前例がなく、当時は誰に話しても「それは厳しいんじゃない?」「ちょっと無理でしょ」といったリアクションが大半でした。僕は単純なので、そう言われると「よし、やってやるよ!」と火が付いてしまい、ひとり熱くなったことを覚えています。

 12月1日の「世界AIDS DAY」にTENGAとして何かできることはないか、と考えたことが始まりでした。とはいえ、当時のTENGAの顧客だけでは、影響力があまりに小さい。もっと幅広く、特に「週末はクラブでよく遊んでいます」みたいな人たちに届けたいという思いがありました。
 
©123RF
 そこで、まさに「シナジー効果」を狙って、アパレルブランドとのコラボという答えに行きついたのです。しかし、広告会社やPR会社に委託する予算はなかったため、知り合いを頼って付き合いのあるアパレルブランドを紹介してもらい、一社ずつ企画書を持ってプレゼンに駆け回りました。

 「『RESPECT YOUSELF~自分を大切にすることは、HIV感染からあなたを守ります~』というメッセージに共感し、一緒に活動してくれるブランドさんを探しています!」と。

 しかし、結果は惨敗。やはり無謀な挑戦だったんだ……そう諦めかけたとき、数日前に訪問した、あるブランドの社長さんから「もう一度、話を聞かせてください」と連絡をいただき、一目散に飛んでいきました。

 「コラボしてくれる相手は見つかりましたか?」
「いいえ」
「難しいですよね。でも誰かがやらないと始まらないでしょ?だから、僕はやってみようと思います。ただし、最低でもあと1社、組む相手が見つかれば」
「ありがとうございます!!」

 何が何でもあと1社説得するぞ!と自分を鼓舞し、一度訪問したブランドに再びオファーし、あらためて話を聞いていただきました。そして最終的には、「roar」「Roen」「SWAGGER」「VANQUISH」「X LARGE」という5ブランドが参加してくれました。

 これまで取り上げていただくことのなかったファッション系サイトでも取り組みが紹介され、上記のブランドのショップでコラボTENGAが販売され、TENGAは新たなステージに上がることができたのです。

 いろいろな人たちの助けがあったからこそ実現できたプロジェクト。諦めない心の大切さと、深い感謝の念を、ここまで強く感じた仕事は他にありませんでした。
 

異業種コラボの起源は、音楽業界にあり!?

 今回、コラボやアライアンスについて書きながら、「なぜ人は、コラボにワクワクするのか」について考えていました。このワクワクが、そのままPR効果につながっていると言えるからです。

 ひとつは、日本人が「限定」という言葉に弱いということがあると思います。加えて、「一粒で2度おいしい」的なお得感、さらに、間違いのないもの同士が手を組むことによる安心感もあると思います。

 そして、それは音楽業界における大物アーティスト同士のコラボに起源があると思っているのです。思い出すのは、「坂本龍一×忌野清志郎」や「マイケル・ジャクソン×ポール・マッカートニー」「ミック・ジャガー×デヴィッド・ボウイ」を見てワクワク、ドキドキしていた自分。「この二人が手を組んだら、何か起きるぞ!」というコラボへの期待値やテンションの高まりが、たしかにそこにはありました。

そういえば、つい最近も豪華なコラボユニットが発表されましたね!寺岡呼人(Vo.Gt.Ba.Key.)、奥田民生(Vo.Gt.Ba.Dr.)、斉藤和義(Vo.Gt.Ba.Dr.)、浜崎貴司(Vo.Gt.)、YO-KING(Vo.Gt.Ba.Dr.)、トータス松本(Vo.Gt.)で結成された「カーリングシトーンズ」。まさに夢の競演!まだ曲も聴いていないのに、心の高鳴りがおさえられません。これこそがコラボの持つパワーであり、人々を引き付ける魅力なんでしょうね。   

 そう勝手に結論づけて、今回はこのあたりで…。よし!「井上陽水×奥田民生」でも聴きながらビールを飲も!
 
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