カンヌライオンズ2021審査レポート

カンヌライオンズの審査を経験して、「個人を尊重する企業の取り組みから我々が学ぶべきこと」

  世界最高峰の国際広告賞「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(通称、カンヌ・ライオンズ)」は2020年、コロナ禍で中止となりました。2年分の作品が審査される2021年は、例年以上に多くの注目が集まりました。

 世界中から選抜された審査員により、6月21日~25日でオンライン審査が行われました。今回は、本審査前の「ショートリスト」の審査員に選抜されたTBWA\HAKUHODOのEXECUTIVE CREATIVE DIRECTOR 近山知史氏に、近年のクリエイティブの変化と注目する作品についてお話を聞きました。
 

カンヌライオンズの予選審査とは

――カンヌライオンズの予選審査は、どのように実施されるのでしょうか。

 私はダイレクト部門の「ショートリスト」という受賞の可能性がある作品を、本審査に残すか判断するための事前審査に参加しました。私の手元にブリーフの案内が届いたのが4月27日で、そのブリーフ自体もオンラインで行われ、内容もシンプルでした。予選審査の仕組みや審査方法を30分程度で説明され、それと同時期に「プレジデント」と呼ばれるカテゴリの審査委員長から審査基準のメールが届いたのです。その時は「呆気なく始まるんだな」と感じました。

 実際に審査システムがオープンしたのは4月28日。まず100~120作品くらいの審査依頼が審査員に届きます。そこから週に1回のタイミングで100件くらい審査対象作品が届き、私の場合はトータルで約470作品をひと月かけて審査するという流れでした。
      
近山 知史
TBWA HAKUHODO
EXECUTIVE CREATIVE DIRECTOR

 カンヌライオンズは、私も作品出品者として参加していたので、審査員に選ばれることはとても光栄に思いました。一方で、担当したのが「ダイレクト部門」で、毎年のように定義や審査基準の難易度が上がっている部門だったので、正直なところ「難しそうだ」という印象を受けました。


――約470本の作品をご覧になって、ここ2年の特徴や近山さんが感じた変化はありましたか。
        

            
 ゲームの世界にまつわるコミュニケーションが増えたり、ダイバーシティーやジェンダーに関するイシュー(論点)が増えたと思いました。特に変化の兆しが如実に現れたと感じたのは、どのケースビデオ(エントリーの際に提出が求められる概要を説明する2分程度の動画)も最後に必ず「これだけの人にリーチした」や「インプレッションを稼いだ」、「PRバリューがあった」など、リザルト(結果)を明確に記載するものなのですが、その効果を表す数字が単発なものからサスティナブルな存在に変化していると感じました。

 たとえば、1回のキャンペーンでこれだけのターゲットに届いたから終わり、これだけ話題になったから終わりではなく、毎年どう続けていくのか、人の気持ちの変化や世の中の変化をどれだけ継続的に生み出したのか、サスティナブルな取り組みが結果に影響を与えていました。

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