マーケティングは、街にどう貢献できるのか #03
渋谷のイベント、誰がターゲットですか【渋谷未来デザイン 長田新子】
2018/07/31
行政の巻き込み
このレースはまさしく公共空間をフルに活用したイベントであり、官庁、行政(千葉市や浦安市)、そして地元との向き合いがとても大事である。街自体のフルサポートがなければ、イベント自体が実現できない。そうなると、企業側の利益のみならず、いかに街にとってメリットがあるかを突き詰める必要がある。
組織
2015年は10万人以上の観客がおり、この規模になると、レッドブル一社だけでは実現できなくなる。実行委員会形式で組織をつくり、専門家が分野ごとに進行・調整していく必要がある。街との向き合いも公平な視点を持ちつつ、両者のいい部分を最大化することを調整するなど、間に立つメンバーが大事である。コンテンツのバリエーション
せっかく10万人近くの観客が来るのであれば、最高の体験をしてもらいたいし、ブランド価値を共有したい。レース自体への観戦や、飛行機の写真撮影を目的にしている人も多いが、それ以上に家族のピクニックやフェス感覚で訪れる人もいる。レースの合間に様々なコンテンツを楽しめ、会場にはフードコートやストリートスポーツのショーケースもあり、“一度で二度、美味しい”ことを目指していた。実際にアスリートやアーティストも新しい観客に触れることを喜んでいたと思う。
これがクロス・コンテンツマーケティングで、ブランドの別の側面もアピールできた。
さらには室屋さんがギリギリの状態を経験しながら、優勝してからのGLAYのライブは、その場にいる観客にとっては最高の瞬間だったと思う。
両者のファンがボーダーレスに交わりお互いを尊重し、互いに興味を持ってくれた瞬間だった。これは、ブランドを担うマーケッターとしては感動的な瞬間だった。後から聞くと自分が一番興奮して、うるさかったらしい。
イベントの目的と価値
新しいファン形成の方法はさまざまだが、自分も仕事を通じて様々なスポーツやカルチャーを通じて、今まで見たことがない、経験したことがないものに実際に触れる機会を得て、ある種ひとりのファンとしても魅了される瞬間を体験した。
最初の話に戻るが、街を中心に行われるイベントは、この新しい認知や体験の創造に向いていると思っている。
特に、渋谷未来デザインは、中立的な立場で物事を進めることに意義がある組織のため、全体のコーディネーションとして最適だと思う。
街のブランド価値を高めるには、どこかの立場に偏らずに、街に集う様々な人の視点に立つことが大事である。だからこそ、そこを使って様々な主体が新たな体験価値を生み出せる可能性は多くあるだろう。
さて今回、自分で動いて見ると、コンテンツへのアイデアが出てくると同時に、もっとこうしたらいいのにといった妄想が膨らみ、実際きりがなくなってきているのかもしれない。
一般的にイベントを考える時に、協賛企業募集は当たり前だが、企業のロゴ露出にとどまるのは、もったいないと思っている。ロゴの露出場所、広告・広報バリューは必要だが、企業側や協賛者が主体的に何をしたいのかを考えて議論していくことが大事だと思っている。
レッドブル時代は、主催イベントが多かった関係で、我々がスポンサー各社と議論し、調整することも多かった。その流れから自分がスポンサー側に回る時は、かなりの要望をお願いして嫌がられることも多かった。広告代理店も適当な対応はできなくなり、本当にやりづらい相手だったと今さらながらに思うわけである。
パートナー側の実施したいことをどこまで引き出し、一緒に街を盛り上げてられるか、お互いがWIN WINの関係でいられるかが、これからの勝負である。
日々、行政や街のことがわかってくると、本当に渋谷という街には可能性があると思っている。今や企業の目的も社会的な課題や可能性にリンクしているべきだと思っているので、今年はあくまでもキックオフとして、長期的な観点で一緒に取り組めるパートナーづくりを行いたいと思っている。
「渋谷のイベント、誰がターゲットですか」に戻る。もちろん渋谷に住む人、学ぶ人、働く人、訪れる人がターゲットだが、それと同時にこれを読んでいるマーケターの皆さんも、ぜひ巻き込まれてもらいたいと強く思っている。
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