広報・PR #02

東京オリンピックの惨事を経て、イベントのスポンサーシップは今後どう変わるのか?

 

「ネガティブ効果」をどこまでPR効果に織り込むか

 スポンサーシップに関連したPR活動をこれまで多く経験してきたが、一般的にはスポンサーシップを行う企業にもリスクは伴う。例えば、「天候不順で大会日程が変更となる」、「有名選手がケガで出場できなくなる」などがそれに当たる。これらの多くは想定しうるリスクでもあるが、多くの企業がスポンサーシップと連動して販促活動などを実施するため「プランB」を用意しておくことで大きなリスクは解消できる。

 ところが、東京五輪は開催直前になって1年延期が決定され、その後に無観客開催が決まるなど、通常の企業協賛案件としては「想定できないリスク」がいくつも発生した。本来の開催時期が当初とは大きく変更されたり、有観客のはずのゲームが無観客となったりした場合、スポンサーサイドが五輪と関連して実施する「観戦ツアーを含む販促キャンペーン」などは、計画通り実施できなくなる。契約内容次第だが、スポンサーシップ契約の解除事由にもなりうる。



 だが、スポンサーシップを継続することになった以上、スポンサー企業はできるだけの対処療法を自社で行うしかない。他の毎年恒例の大規模イベントなどとは異なり、東京五輪は「日本を元気にする」といった祭典の要素も強く、スポンサー企業の多くがオリジナリティの高いプログラムをいくつも用意していたはずだ。

 当初予定していたプログラムが、中止・縮小を余儀なくされるなか、どこの企業も顧客の対応に最善を尽くしたと思うが、すでに告知後の案件に至っては多くの問い合わせやご意見など、少なからずネガティブなインパクトもあったことだろう。

 加えて、多くの国民から五輪に対する開催の是非が問われる事態となった。これはスポンサーシップを行う企業の立場としては最も辛い状況でもある。結果として開幕式への役員参加を見送った企業も出た。

 今後のスポンサーシップ活動においては、想定できるネガティブ・インパクトに加え、「想定できない」ネガティブ・インパクトをどう織り込んでいけばよいのかを考える必要性が生まれたのだ。だが「想定できないネガティブ・インパクトを想定する」というのは、一見矛盾している。

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