事業主インサイト ~現場のリアルな疑問に答えます~ #04
動画や漫画コンテンツを「営業」に効果的に使うために必要な3つの視点
2021/09/16
- BtoB,
機能説明をビジュアル化することで、受注率は向上するのか?
【Question】
「動画や漫画などのコンテンツによって、機能説明をビジュアル化することで、決裁者を動かすことができるのでしょうか? 資料作成・プレゼン力が身についても、実際のサービスを手にしてもらったり操作してもらうことができなければ、なかなかモノの良さが伝わりません」
「動画や漫画などのコンテンツによって、機能説明をビジュアル化することで、決裁者を動かすことができるのでしょうか? 資料作成・プレゼン力が身についても、実際のサービスを手にしてもらったり操作してもらうことができなければ、なかなかモノの良さが伝わりません」
単に情報量が多いのではなく、情報が分かりやすく伝わる動画や漫画の方が、当然ながら決裁の可能性は高まるでしょう。実際に私も、たとえばSaaS型マーケティングツールの導入を考えているときは、サイトでは実際の操作性(UI)の動画を探すことがよくあります。
ただしそれは、私の場合だと決裁にあたり懸念がないか、能動的にチェックしている状態のときが多いです。営業の方の説明がセットである必要はありません。一方、「ある程度興味がある」という状態や、「あまり興味がない」場合はどうでしょうか?
そこで、私も次の3つのタイプのクライアントになったつもりで考えてみます。
① 「買う気満々タイプ」に有効なアプローチ
② 「ある程度興味があるタイプ」に有効なアプローチ
③ 「あまり興味がないタイプ」に有効なアプローチ
① 「買う気満々タイプ」に有効なアプローチ
まずは、たとえ表に出していなくても、内心は買う気満々のクライアントについてです。このタイプは、そのサービスを「買うべき理由」よりも「買わない理由」を潰すためのカウンターを欲しているのではないでしょうか。要は、社内説得の材料を探しています。たとえば、私の経験上、決裁者の私自身は通す気満々でしたが、運用担当者からの「UIが恐ろしく使いにくい」の一言で、決裁を見送ったこともありました。また別の例では、自分の上長の決裁を通すために、自分と決裁者の間にある情報やイメージの差分を短時間で埋めようと、「動画を見てもらう」ということもありました。
決裁の障害を短い時間で取り除く「失点を減らす」アプローチは、動画とテキストコンテンツ(Q&Aなど)の組み合わせで、ある程度クライアントに自己解決してもらうことも可能です。
②「ある程度興味があるタイプ」に有効なアプローチ
このタイプのクライアントは、頭の中に様々な問いが渦巻いています。 ・興味はあるが、「いま」やるべきなのか?
・類似のサービスが複数ある。それぞれ違いがあるようだが、何を決め手とすべきか?
・どんな目的を設定すれば、成功できそうか?
・類似のサービスが複数ある。それぞれ違いがあるようだが、何を決め手とすべきか?
・どんな目的を設定すれば、成功できそうか?
決裁者は、いま自分が置かれた状況、つまり目下の目標や打ち立てた戦略において、提案されているものがフィットするのか、しないのか、そこを脳内で繋ぎ合わせる作業を行なっています。
そんなときに、プロダクトアウト的にモノの良さ、他社にはない機能などを1から10まで一方的に伝えたところで、ツボを押せるかどうかは分かりません。むしろ、決裁者側が掘り下げて質問したいときに、その機を失わせてしまうこともあるかもしれません。
この段階では、3つの基本的な確認作業を丁寧に行う必要があります。
1. モノの良さ=プロダクトの性能ではなく、それがどんな良いことをもたらすのか、まずその便益を伝え、それがクライアントの目的とマッチしているか確認
2. 目的の達成手段として、クライアントが思い描く戦略において、どのようにワークするのか、そのフィッティングを確認
3. なぜ他社ではなく、当該ソリューションが相応しいのか、唯一の選択肢になりうることを確認
2. 目的の達成手段として、クライアントが思い描く戦略において、どのようにワークするのか、そのフィッティングを確認
3. なぜ他社ではなく、当該ソリューションが相応しいのか、唯一の選択肢になりうることを確認
その3つを事前のヒアリングで確認したのち、そのアンサーとなるような動画があるならば、手短に深い理解を促すために有効な手段となるでしょう。たとえば、包括的にそれらが織り込まれた「代表的ユースケース」として提示するのが好ましいです。
少し話は逸れますが、私が在籍するLIFULL HOME’Sでも、ムック本を出版して漫画でわかりやすくサービスの良さを伝えたり、動画をつくって訴求しています。特に、店舗型有人相談サービスの「住まいの窓口」では、Webで完結する物件検索型のサービスと異なり、利用までのハードルが高いため、リッチコンテンツで訴えかけることが効果的です。
最初は、漫画や動画といった形式そのものに力があると信じて、単にサービスのリーフレットにある内容を置き換えているだけでした。しかし、フォーマットを変えただけでは大きな成果を得られません。徐々に対象のお客さま像を明確にして、その興味関心に寄り添う形で内容を変えていったところ、格段に効果が増していきました。リッチにすれば効果が増すという単純な話ではないことに気付かされました。
③ 「あまり興味がないタイプ」に有効なアプローチ
モノの良さが伝わることと、決裁するかどうかは別ということは、B2Bではよくあることです。あまり興味がないこの属性は特にそうです。「とても面白いサービスですね、でもウチの今期の戦略はこうで、目的としてはこうだから、優先度はなかなか上がらなそうですね・・」
と、私も何度返答したことか。攻撃力を強化している時期に、守備力の強化を訴えかけても、なかなか選ばれないということです。そこで、いやいやバランス型に戦略を変更しましょう!と踏み込んでいくこともひとつの方法ですが、いったん引いて「いいポジション」で待つことが現実的でしょう。
まずは、すぐに決裁に至らなくても、自分ごと化してストックしてもらうことが大事です。決裁者にとっての次の一手、すぐに取り出せる引き出しの一番上に置かれることを目指します。決裁者は戦いの武器や戦術変更のシナリオを、常に複数ストックしておきたいものです。
そのためには、商品の名称認知や特徴理解を前面に出すのではなく、決裁者の最終目的を達成しうる手段として認識されることが重要です。「この商品はこんな特徴があって、他の類似サービスとの違いはこうで・・」ということは覚えていられません。せいぜい「こういう状況になったら使える」くらいです。
ロールプレイングゲームのようなイメージをすると分かりやすいです。レギュラー装備以外の装備のことは、全て正確に覚えていませんよね? しかし、得たい成果別のストック(「防御力」の引き出し/「攻撃力」の引き出し/「魔法」の引き出しなど)に分類して、いざとなったら引っ張り出されるようにしておくはずです。そのときに、記憶定着率の高い手段として、ストレートにベネフィットをうたった動画や漫画を使っていくことが、シンプルな解決策となります。
まとめ
動画や漫画などのリッチなコンテンツは、今回挙げた3タイプのクライアントのどこに狙いを定めるかをしっかり設定することによって、その効果は発揮できます。動画や漫画という形式自体に強い力は一定量あるものの、既に「当たり前の手段」となっており、相対的に訴求力は弱まっているように思います。「全部盛り」の動画をよく見かけますが、経験上、あまりおすすめしません。いま一度、本質に立ち返り、目的を明確にしたコンテンツの戦略を考えていきたいものです。