RYUKYU note #12前編
「締めはステーキ」沖縄の独自文化を全国に広めたステーキ店「やっぱりステーキ」の拡大戦略
2021/10/01
ちなみに、お肉の部位としてミスジを定番化させたのも、当社が最初でした。ミスジは当社がメインで使っている部位で、肩甲骨の近くにある赤身のお肉ですが、もともと一般的にステーキ肉としての利用はほとんどありませんでした。ほかのステーキ屋さんが一時的にミスジステーキを出したことはあっても、定番化しなかったんです。
なぜかというと、ミスジは「3本の筋」という意味からきており、食べるにはお魚のように筋をよけて3枚に捌くなど、下処理に手間がかかるためです。1キロ買っても、最終的に食べられるのは620グラム程度。そこまで丁寧に処理しなければ、おいしく食べられないので、どこも扱いたがらなかったんですよね。ただ、丁寧に処理さえすればとても美味しく食べられるので、いまではスーパーマーケットの棚にもミスジが並ぶようになりました。ミスジのおいしさを日本人が認めて広まったと感じています。
――お肉に付けるソースも、バリエーションが豊富ですよね。
それも我われならではの特徴ですね。創業当初からソースは10種類以上あって、好きなソースでお客さんに好きなように食べてもらうようにしています。沖縄は「A1(エーワン)」と呼ばれるソースがステーキの定番なのですが、中にはA1ソースが苦手な人もいます。
「自分のおいしい」は、必ずしも人のおいしいではないので、いいお肉を仕入れて処理をしますが、食べ方はお客さんに任せようと思ってソースを充実させました。他のステーキ屋さんでは「この肉にはこの食べ方で」と指定するお店が多いので、自分で好きなソースを選んで食べていいというスタイルは、我われ独自の考え方ではないかと思っていますね。
それから、券売機で食券を購入して注文するというファストフードスタイルも、ステーキ屋さんでは珍しいかもしれません。1000円でサラダ、スープ、ご飯が食べ放題というのも、「やっぱりステーキ」の特徴です。ステーキを乗せて提供する鉄板にもこだわりがあって、遠赤外線を出す溶岩石のプレートを使っているので、お肉がふっくらジューシーに焼きあがるんです。
東京への進出は必然。結果的に、大きな広告効果を生んだ
――沖縄県外にも出店されていますが、全国に店舗を広げようと思われた背景は何でしょうか。
沖縄の定番になることも大事でしたが、もともと飲食のコンサルタントを経験していたこともあり、フランチャイズ(FC)化して全国に広げようという考えは事業を始めた当初から決めていたことでした。全国展開には、土地勘のないなかでエリアや店舗を探したり、現地でスタッフを採用したりと労力がかかります。
そういう中でも、ありがたいことに20坪で月間1800万円の売上、テーブルは1日30回転以上という全国でもトップクラスの数値を記録した店舗の成功例もあります。FC店が1つ成功すると、自分もやりたいという人が殺到しますし、従業員の独立制度もつくっていたので、そこから2人ほど独立していったスタッフもいます。