女性の『買う瞬間』をつくる方法 #01
女性の心を捉えるためには「エビデンス+情緒」が大切 【コーセー・吉野家・ライオン・RIZAP 座談会】
女性をターゲットとした商品・サービスのマーケティングをテーマに掲げたカンファレンス「ウーマンズインサイトアジェンダ2018」が、9月に開催される。開催を前に、同イベントのカウンシルメンバー4人が「女性の心をとらえるために必要なポイント」について意見を交わした。
長く続くブランドは、女性から支持されている
小林 吉野家の現状の主要ターゲットは、やはり男性ですよね?女性客をもっと獲得していかなければいけない、という方針なんですか。コーセー 宣伝部 企画・PR課 課長 小林祐樹
広告会社営業にて通信、飲料、教育、出版など様々な広告主を担当。コーセー入社以来コミュニケーション分野に従事。雪肌精、ファシオなどのプロモーション企画、電波・デジタルメディア買付、CLUBKOSE(会員組織)運営、フィギュア・ゴルフなどのスポーツマーケティングを担当。
現在のお客さまを分析すると、まだまだ男性が多いです。先日、女性向けにアンケートをとったところ、「吉野家は『道場』ですよね。つゆだく、ネギだく、頭の大盛り……メニューに書かれていない呪文を言わないと、あの自動ドアは開かないんでしょ?」なんて、冗談半分のお声も(笑)。
吉野家 CMO 田中安人
大学卒業後、ヤオハン・ジャパンに入社し、経営企画に携わる。ヤオハン倒産後に広告制作会社を経て、広告代理店を起業。その後、グリッド設立。吉野家ではCMOとしてマーケティングを統括。公益財団法人日本スポーツ協会スポーツ広報委員として、日本におけるスポーツの未来設計も行う。
小林 女性を意識した戦略・施策を打ち出すことで、既存客である男性が離れてしまうという危機感はありませんか?
田中 もちろんありますが、そこは、「吉野家が築いてきた120年のブランドは何があっても潰れない」という信念・覚悟をもって取り組んでいます。
他の業種のブランドを見ても、女性に支持されないものは、やはり長続きしていないのが現実です。吉野家は全国1200店舗のほとんどにテーブル席を用意しているのですが、「カウンター席しかない=男性向け」というイメージをなかなか払拭できないため、テーブル席で家族が食事をするシーンを描いたテレビCMを地方で試験的にオンエアしたところ、集客効果が顕著に表れました。
女性に売れる商品・サービスの追求
小林 コーセーの女性社員の中には、RIZAPのパーソナルジムに通ったことがある人がいますよ。RIZAP プロダクト事業本部 マーケティングユニット長 鈴木麻美
オーバーチュア、ヤフーを経てRIZAPグループへ。プロダクトのマーケティングを担当。
私が担当しているのは、2018年に本格始動したフード事業です。ジムの会員への直販およびECでの販売を行っている機能性食品「ライザップ・コレクション」の商品開発・販促を手がけており、将来的には自社チャネルだけでなく、既存の流通・小売り網を通じた販売も視野に入れています。
RIZAPのジムに通うお客さまと、RIZAPのフード商品を購入するお客さまとでは、ニーズが異なります。フードを購入されるお客さまは、ストイックに減量したいとか、人並み以上の筋肉を手に入れたいと望んでいるわけではなく、「一食だけ健康食品に置き換えたい」「ちょっと美容を意識した食生活を送りたい」と考えています。女性を中心とした、そうしたニーズをお持ちの方々に刺さる商品やコミュニケーションとはどんなものか、日々研究しています。
小林 ライオンさんと言えば、まさに女性に寄り添ってきたブランドですよね。
横手 はい、127年の歴史を持つライオンの事業の中心には、常に女性がいました。昨今、私たちが課題と考えているのは「女性らしさ」の多様化です。女性の社会進出はもはや当たり前となり、旧態依然とした「ママ」や「主婦」といった概念はなくなりつつあります。こうした中、私たちのビジネスのコアターゲットである女性をどのように捉えるか。常に直面している課題です。
ライオン オーラルケア事業部ブランドマネジャー 横手弘宣
2000年、ライオンに入社。2006年、営業経験を経てマーケティング本部へ。住宅用クリーナー「ルックブランド」を担当し、「ルックまめピカ」・「ルック防カビくん煙剤」の開発に携わる。その後、2年間のMBA留学。2014年からマーケティング本部に復職。現在は同社のオーラルケア事業の基幹ブランド「予防歯科 クリニカ」のブランドマネジャー。