RYUKYU note #12後編

快進撃の「やっぱりステーキ」、変わらぬ信念とアイデアでコロナ禍でも黒字化できた秘策に迫る

 

儲けに走るのではなく、地元のオンリーワンの存在に


――経営やマーケティングで心がけていることはありますか。

いまは、出店しようと思えば100店舗でも150店舗でもオープンできますが、店舗をどんどん増やすことを目的にしているのではなく、お客さんに自分の食堂という感覚で通ってもらい、「おいしいね」と言ってもらえることが一番だと考えています。もちろんFCのオーナーさんの利益に繋がればいいのですが、当社だけが利益を求めても仕方がありません。まずは店舗の周りに住む方に「出店してきてくれて良かった」と思ってもらうことが何よりも大切だ思うのです。
 

 その一方で、店舗を任せるオーナーさんや出店の場所はすべて自分で選んでいます。店舗の設計もすべて自分で確認して判断するので、正直なところ、開店ペースは1年に20店舗が限界です。でも、それが好きでやっていますし、そういった過程を経てオープンした店舗に「やっぱりステーキ」を知るお客さんが来て、「やっと近くに来たね」「待っていたよ」と言ってくださると、それが活力になります。

 出店の際のマーケティングというと、だいたいの経営者は、そのエリアの周辺にどれくらい人が住んでいるといった商圏を調べて判断していくと思うのですが、自分たちは人口が少なかったとしても、市場があると思えばオープンします。東京のように人口の多いところに出店すればそれだけで売れますが、そこまで稼がなくてもいいから、その地元のオンリーワンの存在になってくれればいいと思っています。

 つまり大事なのは、必要とされているところに出店するという考え方なんです。だから、周囲が田んぼに囲まれているような場所でも、ステーキ屋さんが全然なくて、地元の人に食堂感覚で使ってもらえるのであれば出店します。田舎であれば車で移動することが多いので、幹線道路でも周囲に飲食店舗がほとんどないエリアを選びます。そして、晴れの日に来るお店ではなく、ファストフードのように毎週通えるコスパの良さを売りにプロモーションします。

 競合は少なく勝負に出やすいのですが、もちろん成功ばかりではありません。文化に馴染まなかったり、売上が立たないなどダメな店舗は残念ですが、すぐに閉じます。経営判断もコロナ対応のようにスピードが命だと思うんです。

――お店を運営していくうえで、気を付けていることはありますか。

 いまは店舗の新規オープンが落ち着いているので、本部社員を全国に派遣して、当社が規定しているルールを既存店舗がきちんと実施できているかどうかを確認しているところです。たとえば、日本人はお米が好きだからこそ、おいしいお米を使うというコンセプトを売りにしているのですが、「いつの間にかお米が変えられて、おいしくなくなっている」とコメントされることもあります。そのような店舗があると、すぐさま「勝手に変えないでほしい」と指導に回ります。

 お客さんありきで物事を考えたときに、当たり前のことを当たり前にやることが、食べに来てくれることへの感謝の表れだと考えています。ただ、店舗が拡大したために目が行き届かず徹底されないルールも出てきているのが事実です。それを、定期的に本部社員が地方店舗を回ることで、いつの間にか変えられてしまっていたところを是正したり、経営者である自分たちの信念やこだわりをきちんと伝えているんです。

 店舗によってクオリティが異なれば、「あの店舗は美味しくない」とすぐに噂が広まる時代ですから、定期的な店舗視察が重要だと考えます。当たり前ですが、いつどこの「やっぱりステーキ」を訪れても同じ品質を提供して、同じように満足度してもらうのが出店者の義務だと思って徹底しています。

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