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ルームクリップが家具D2C のbydesignを買収した狙い。インテリア領域に新たなマーケットを生み出す
2021年8月、住生活の領域に特化した日本最大級のソーシャルプラットフォーム「RoomClip(ルームクリップ)」を運営するルームクリップが、D2Cインテリアブランド「Kanademono(かなでもの)」などを展開するbydesign(バイデザイン)を買収し、子会社化した。注目SNSがなぜD2Cブランドを買収したのか。bydesignの取締役社長で、ディノス・セシールのチーフECオフィサーも務める石川森生氏に詳しい話を聞いた。
2社の統合でシナジーが生まれやすいサービスに発展すると判断
――ルームクリップのグループ入りは、どういった経緯から決まったのでしょうか。
ルームクリップとbydesignのアセットを組み合わせれば面白いことができるという思いがもともとあったので、我われからルームクリップ 代表取締役 兼 代表執行役員CEOの髙重正彦さんに提携を提案したんです。そうしたら、髙重さんも同じことを考えていたようで、それから1年ほどかけてお互いの取り組み方を探るうちに、完全に統合してしまった方がシナジーが出しやすいし、経済的合理性もあるという結論に落ち着き、最終的には売却という形を決断しました。
――なるほど。石川さんは、この売却をきっかけに社長に就任されましたよね。
そうですね。bydesign前社長の音田康一郎とは以前から仲が良く、彼が立ち上げたときから手伝っていました。そして昨年夏から本格的にサポートすることになり、取締役として参画しました。
bydesignは音田ともうひとりの創業メンバーが立ち上げたのですが、2人はもともと新しい企業やサービスをつくることに強みがある“シリアルアントレプレナー気質”です。一方の私はどちらかというと、0(ゼロ)から1(イチ)をつくるよりも、1を十や百にするのが得意なタイプです。bydesignがゼロイチから次の拡大フェーズに入るタイミングでこれからの経営を考えたときに、私にバトンタッチする方がいいだろうという話になり、社長を引き受けることになりました。
――石川さんは、ディノス・セシールでCECOも務めておられます。ディノスでも家具の販売をしていますが、bydesignとの違いは何でしょうか。
ディノス・セシールにはすでに数百万人という顧客リストがあり、ある意味、その人たちに最適化されたマーチャンダイジングをしています。そのお客さまに喜んでもらえる商品をつくることは非常に得意なのですが、一方でSNSを中心とするD2Cのマーケットにゼロから参入していくというのはあまり現実的ではありません。逆もしかりで、ベンチャーのD2Cであるbydesignがディノス・セシールの顧客リストに刺さるモノ作りができるかというと、そうでもありません。あえて差別化を意識したわけではありませんが、カニバリゼーションはほとんどないと感じています。