トップマーケターが語る2022年の展望 #01

足立光、音部大輔、富永朋信、世耕石弘 ―トップマーケターが語る2022年の展望①

 新型コロナウイルスの感染拡大は以前に比べ落ち着きを見せてはいるものの、まだ完全に収束が見える状況にはありません。パンデミックをきっかけに消費者の購買行動やコミュニケーションに変化が見られるなか、2022年における企業のマーケティング活動はどのように変化していくのでしょうか。トップマーケターが「2022年の展望」を語ります。
 

マーケターとして改めて「意識すること」

足立光
ファミリーマート
エグゼクティブ・ディレクター チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)

 2022年は、昨年までの流れであった、①リアルとデジタルを俯瞰したマーケティング、②メディアやツールの多様化、③所属組織ではなく個人、がさらに加速すると考えています。

 スマホアプリなどでも、デジタル広告の効果は低くなり、リアルイベントや新聞広告やチラシなどをユーザー獲得のために使いこなすのが当たり前になりつつあります。マーケティング担当者は、デジタルなどの分野に閉じこもるのではなく、より広い視野と知見が求められています。

 また、Facebookはもちろんのこと、LINEも使わない世代が増えています。マーケティング担当者は、既存のやり方に固執することなく、次々と登場する新しいメディアやツールを理解して取り入れていく柔軟性が必須です。

 さらに、個人が複数の組織に属して働くのが普通になりつつある一方で、SNSなどで個人の評判や実績がすぐにわかるようになりました。個人としての価値貢献や実績をシビアに追求するだけでなく、発信するなどして自分自身をきちんとマーケティングしていくことが、あたり前になりつつあります。
 

目的の共有、共通言語の確立

音部 大輔
クー・マーケティング・カンパニー
代表

 共通の課題を解決するための協調と連携は、2021年のオリンピックで垣間見えた変化の兆しのひとつのように思います。それはスポーツクライミングのオブザベーションタイムなどに発現していました。目的を共有し、共通言語を確立することで、同業や異業種の他社や、多様なプレイヤーとの連携や共創を進めやすくなることを示唆しているように思います。民族や宗教を超えた、人類に普遍的で合理的な正義としてSDGsが存在するのであるなら、17個のうち自社に関連の高い項目をパーパスとして掲げることは、同じパーパスを掲げる他社との連携の重要な一歩となるはずです。

 そうした連携が可能な環境下では、全体像を描くことのできるチームは、そうでないチームに比べると、社内だけでなく社外にも連携先を期待できます。より多くの「資源」を得られるので、より強くなり、より高い競争を有利に進められることは想像に難くありません。

 パーパスが連携を促し、共通言語として全体像が共創を可能にし、それぞれの成功確率が高まっていく関係がはじまる年になるかもしれません。
 

マーケティングという役割の統合と拡張

富永 朋信
Preferred Networks
最高マーケティング責任者

 人間理解をベースに、顧客の認知・態度・行動変容を設計・実施するのがマーケティングであるとすれば、これを社内向けに実施すれば[例えばMVV(Mission, Vision, Value)の行動変換など)人事の仕事になるし、B2B顧客とのダイレクトコミュニケーションに援用すれば再現性を伴ったセリングプロセスが確立されます。

 これはマーケティングがマーケティング部門の外側に拡張する可能性を示しており、2022年以降は組織の近接やインテグレーションという目に見える形で、それが促進されると考えます。
 

予測不可能な環境下でも楽しめるマインドを

世耕 石弘
近畿大学
経営戦略本部長

 2年連続で先行きの見通せない新年を迎えることになります。予測不可能なことが連発するであろう2022年、ヒステリックな情報が飛び交う中でも、瞬間瞬間に正しい意思決定を下せる、下させる環境づくりを常に心がけています。あとはこの環境を楽しめるマインドも持ち続けたいと思います。

 近大においては「オープンキャンパス」が開催できるかどうかわからない状況下で、どっちに転んでもいいように「行けたら行くわキャンパス ~やれるだけやります~」と銘打って“ゆるく“開催しましたが、やけくそになってこうしたネーミングを思いついた瞬間は非常に楽しかったです。

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