いま注目のビジネスパーソン #01前編

海外向けに日本のお菓子をサブスクで提供。年商40億円「ICHIGO」成功の秘訣に迫る

 海外向けにお菓子のサブスクリプションECを展開するICHIGOは、2022年に越境EC売上高が40億円を突破する見込みです。いまや、さまざまな業種で導入されている「サブスクリプションビジネス」ですが、同社は日本のお菓子や雑貨を詰め込んだボックスを海外約180カ国と地域をターゲットに届けているのが特徴です。

 越境EC専業企業として右肩上がりの成長を続ける同社 代表取締役社長の近本あゆみ氏に、海外ユーザーをどのように獲得し継続客に育てているのか、そして越境ECを成功に導く秘訣は何か、ユナイテッドアローズ 執行役員DX推進センター担当本部長CDOの藤原義昭氏が話を聞きました。
 

日本人の手で「本物の日本」を届けたかった

藤原 近本さんのキャリアのスタートはリクルートでしたね。

近本 はい、2009年に新卒でリクルートに入社して、最初は「ホットペッパービューティー」で営業を担当していました。私が入った当時はまだ紙媒体がメインで、これからWebを立ち上げるというタイミングでしたね。そこで1年半くらい営業を経験し、その後は共同購入型クーポンサイト「ポンパレ」の立ち上げメンバーとして2年ほど企画を担当しました。
 
近本あゆみ
株式会社ICHIGO
代表取締役CEO
 実は、「ポンパレ」でECに携わったことが、いまのビジネスを立ち上げる原点になっています。ECは商圏が全国に広がるので、ものすごく可能性が高いと感じたんです。

藤原 そこから「ICHIGO」を起業するに至ったきっかけはあったんですか。
 
藤原義昭
株式会社ユナイテッドアローズ
執行役員DX推進センター担当本部長CDO
近本 リクルートで働いていた当時、職場があった東京駅周辺から銀座にかけて日に日に外国人観光客が増えていると感じていました。特に2010年くらいからでしょうか、急に数が増えて「爆買い」が流行り始めていました。

 それを見て、海外の人向けに通販という手段で日本の物を売ったら需要があるんじゃないかって思ったんです。そう考え始めたのが2012年くらいでした。

藤原 その3年後になる2015年に「ICHIGO」を立ち上げられましたが、どのような事業をされているのでしょうか。

近本  100%海外向けのEC事業で、ビジネスモデルとしてはサブスクリプションです。
会員になっていただくと、お菓子や雑貨などを詰めたボックスが毎月世界中どこでも届くというコンセプトのサービスになります。

 その特徴としては、商品をお客さまが選ぶのではなく、日本人バイヤーが選ぶところにこだわっています。なぜなら、海外向け事業をやりたいと思い競合を調べたときに、同じようなサービスを提供している会社があったり、偽物が多く出回っていたりすることを知ったからです。日本製の商品ではないものが売買されていたり、海外の方が日本の商品であると誤解して販売していると知り、衝撃を受けたとともに悲しい気持ちになりました。

藤原 よく海外映画に出てくる日本のイメージみたいなものでしょうか。

近本 そうです。どこでつくられたかよくわからないお菓子が多かったので、「これは私の出番だ、日本人の手で本物を届けたい」と真剣に思うようになったのです。
 

海外展開するサービスだからこそ、海外スタッフの視点が欠かせない

藤原 はじめから「サブスクモデル」にしようと思っていたのですか。

近本 海外向けECをやることは先に決めていて、起業する1年前くらいから外国人の共同創業者と2人でいろいろリサーチしたんです。

 まず、中国を調査しましたが、市場は大きいけれど、商圏が独特なので自分たちには難しいねという話になったんです。その次に大きいマーケットである米国をリサーチした結果、サブスクバブルが起きていて、色々なものがサブスクモデルで売られていたんです。

 たとえば、男性用カミソリのサブスクボックスがものすごく流行っていたり、お菓子、生鮮食品とレシピ、ライフスタイル雑貨などがあったり、色々なものが販売されていました。

 日本のものを売っている事業者もいたんですけど、偽物が多かったので「これは勝てる」と思い、このビジネスモデルに挑んだという背景があります。

藤原 提供する商品にこだわりはありますか。

近本 もちろんです。いまは主力商品の「TokyoTreat」を筆頭に、和菓子の「Sakuraco」、キャラクターグッズを詰め合わせたボックス「YumeTwins」などサブスクサービスを4つ提供していて、それぞれ専任のバイヤーがいます。最も大切にしているのは、毎月商品のラインアップを変えてお客さまに飽きさせないということがあります。
 
菓子などを定期販売する「TokyoTreat」
 
和菓子やフルーツなどを定期販売する「Sakuraco」

 たとえば、今月は北海道のお菓子、来月はバレンタイン特集などと各月ごとにテーマを設けるを持たせることで、見栄えも変わり長く購入していただくことに繋がります。

 それから、バイヤーチームの中にチェックリストを設けていて、カテゴリに偏りがないか、ボリュームは担保できているか、UGCとしてバズりそうなお菓子が入っているかなど、クオリティを担保するようにも努めています。

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