いま注目のビジネスパーソン #02前編

「着られる服がない」コンプレックスをビジネスチャンスに変えた、小柄女性向けアパレルブランド「COHINA」の成長ストーリー

 

事前にファンを増やし寄り添うことで、将来の購入者につなげる

藤原 最初からSNS経由で販売すると決めていたのですか。

田中 はい、立ち上げ当初ではニーズ予想は難しく、ノウハウやリソース不足から店舗などの設立は難しいだろうと思い、ミニマムで設計しようという理由から、まずはInstagramで集客しようと決めていました。


藤原 Instagramはフォロワーがいてこそ、商品が販売できるチャネルになると思います。ブランドローンチまで、フォロワーをどのように集めたのですか。

田中 ハッシュタグをつけたり、自らフォローしたり、Instagramの初歩的な運用をしていました。商品が完成していないと当然商品紹介などのコンテンツも作れないので、まずは小柄さんにとってフォローすると役に立つアカウントにしました。

 たとえば「ユニクロのXSサイズのパンツを着てみたら良かった」という投稿をコツコツつくっていました。そこでファンを増やしながら、2018年1月に商品ローンチを迎え、150cm前後の小柄女性向けサイズのアイテムをInstagramで販売開始したのです。

藤原 実際に手応えはどうでしたか。

田中 ローンチ当初はアカウントのフォロワー数が1000人程度でしたが、ライブ配信やストーリーの更新は頻繁にしていたんです。徐々にフォロワーの反応が良くなってきて、そのタイミングで「セットアップを発売します!」と発表できたので、すぐに何件か注文がありました。てっきり、私の知り合いが買ってくれたのかなと思っていましたが、本物のお客さまだったんです。
 

顧客の悩みに正面から向き合うことで「救世主」になれる

藤原 翌シーズンの商品づくりはどのくらいで始めましたか。

田中 初期ロットの販売開始からすぐにつくり始めました。ただ、生産から販売までは時間がかかるのと、まずは品揃えが充実していることが大切だと思い、韓国で買い付けたセレクト商品の取り扱いを始めたのです。1年間ぐらいはこのサイクルを継続していましたが、徐々にお客様も増えて生産のための体力もついてきたことから、オリジナル商品に振り切ろうと方針を転換しました。

藤原 戦略やアクションを変えたことで、顧客の熱量や反応は変わりましたか。


田中 そうですね。「COHINA」設立から1年も経たないタイミングで、試着会を開催しました。Instagramを見てくださっているお客さまの存在は知っていましたが、実際にたくさんの方が来てくれたことに感動を覚えました。いまでもその嬉しさは忘れません。

 その一方で、まだECで買い物をすることに慣れていない人がこんなにも多くいるんだと知ったきっかけにもなりました。もっと本腰を入れて、サイズ感の伝え方や商品数を増やせば、顧客数を伸ばせるのではないかと思うようになりました。

 小柄な女性の方々はとにかく洋服に困っていて、試着会でも「COHINAは救世主だ!」と言ってくださる方がいました。同じ悩みを持つ人が目の前にたくさんいる、それを生の声で把握できたことはすごく貴重な機会でした。このような積み重ねで、「COHINA」を始めて1年ぐらい経った時、ようやく小柄向け商品は「売れる!」と確信を持てました。

<後編へつづく>

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