いま注目のビジネスパーソン #02後編

生活からなくなると困る存在に。小柄女性向けアパレルブランド「COHINA」の熱狂的ファンをつくるコミュニケーション戦略

前回の記事:
「着られる服がない」コンプレックスをビジネスチャンスに変えた、小柄女性向けアパレルブランド「COHINA」の成長ストーリー
 身長150cm前後の小柄女性向けファッションブランド「COHINA」は、2018年の創業以来右肩上がりに成長し、月商は1億円を超えるといいます。「着たい洋服が選べない」という悩みを払拭するアイテムを揃えて支持を集めています。

 自身も身長148cmと小柄である同社の代表 兼 ディレクター田中絢子氏に、COHINA創業までの想いや商品企画から販売を経て、必要不可欠なブランドへと成長させたストーリーを、ユナイテッドアローズ 執行役員DX推進センター担当本部長CDOの藤原義昭氏が聞きました(前編記事はこちら)。
 

ブランドコンセプトはつくらない、小柄がゆえのバリエーション展開

藤原 アパレルブランドは「〇〇らしさ」が大事かなと思うのですが、「COHINA」らしさは意識されていますか。

田中 あまり考えていないかもしれません。私たちは小柄な女性向けに洋服を作っていますが、小柄と一口にいっても年齢や体型もさまざまです。たとえば、綺麗めが好きな人もカジュアルが好きな人も、洋服でかっこよく決めたい年頃の子もいます。「COHINAらしさ」みたいなコンセプトを持ちすぎてしまうと、展開できる洋服の幅が狭くなると思うんです。そのため、あまりターゲットやテイストを固定しすぎないように意識しています。

藤原 顧客がどういう気持ちでその服を着るかを中心に考えているんですね。
 
藤原義昭
ユナイテッドアローズ
執行役員DX推進センター担当本部長CDO
田中 そうですね。トレンドは参考にしつつも、結局は顧客に喜んでもらえるかどうかが重要です。仮にトレンドから外れるようなアイテムでも、もしかしたら5人ぐらいはめちゃくちゃ刺さるアイテムができたら、それはそれでいいかなと思っています。

 

顧客と企業がお互いをリスペクトし合う関係づくり

藤原 顧客との接点として、「COHINA」はインスタライブを毎日やっていますよね。

田中 はい、最初のアイテムをローンチする前の2017年から活用しています。当時、日本ではまだインスタライブを使っている人が少なかったのですが、海外では流行っているらしいと聞いて挑戦してみました。

もともとアパレル出身ではなく、売れる洋服が何か分からなかったので、まずは顧客とコミュニケーションを取ってみようと考えたのです。もちろん当時は、マーケティング支援会社に依頼するお金もなかったので、手っ取り早くコメントをもらえるツールがインスタライブでした。「サンプルの色はどれがいいか」、「私が着ると丈感がこれくらいですけど、どうですか」など、質問に対して小柄女性の反応がダイレクトに返ってきます。それらの意見は、そのまま商品企画開発に活かせたので、インスタライブをやらない理由がありませんでした。
田中絢子
COHINA 代表兼ディレクター
藤原 とはいえ、インスタライブでものを売るのは難しいですよね。

田中 最初は見よう見まねでしたが、徐々に面白いなと思うようになりました。「台本を用意しなくちゃ」と身構えている方もいるかもしれませんが、そんなに警戒しなくてもいいのがインスタライブだと思っています。顧客が知りたいのはリアルな情報であって、用意された台本ではないですよね。着用している人が感じる着心地などの生の声を知りたいので、あまり台本を固めすぎないようにしています。もちろん嘘の情報や人を傷つける発言は徹底して気をつけています。

藤原 顧客との関係性や距離感はどのように意識されていますか。

田中 「小柄界を一緒に盛り上げていく仲間」だと思っています。だからこそ、お互いに対しての配慮やリスペクトがある上で接してくれます。顧客は私たちのインスタライブに来たらその場を盛り上げてくれるし、どんどん他の人にもおすすめしてくれる。そうやって、相互にコミュニケーションを取りながら濃いファンになってくれる方が多いです。

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