音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #35

P&G出身者ばかり? マーケティング業界で成長し、プレゼンスを上げるための考え方

 

経験値の稼ぎ方の違い①:共通言語と仕組み


 成長し、できることが増えるためには「知識」が必要で、知識を生み出すのは「経験」です。経験は、自分自身の直接的な経験だけを指すものではありません。書籍で読み、講演で聞いた誰かの経験は、新しい知識を生み出してくれます。また、社内の誰かの経験は応用しやすい知識を生み出してくれるでしょう。紙おむつブランドの失敗から洗剤ブランドが学び、洗剤ブランドの成功から消臭剤ブランドが学べれば、それぞれが1年間で数年分の経験や知識を得ることも可能です。体系化された共通言語と、標準化されたブランドマネジメントの仕組みをもつことで、組織内で経験や知識を融通しやすくなります。

 日本の企業へのこうした仕組みの導入でも、メーキャップブランドがスキンケアに学び、スキンケアがヘアケアに学んで、複数ブランドが同時に成長軌道へと回復した例があります。その際には、①次回の成功につなげるための振り返りなどを通して、プロジェクトごとに経験を「収集」し、②得られた経験を一般化し、汎用性を高めた知識として「蓄積」し、③定期的な会議などを通して、経験や知識を「共有」する仕組みや習慣、機会をもつといいでしょう。
 
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経験値の稼ぎ方の違い②:専門性


 同じ10年でも、ひとつの専門領域にもとづく10年と、2~3年ごとのジョブローテーションで3つ4つの領域を経験する10年とでは、得られる経験値も、その稼ぎ方も異なります。前者であれば専門領域の経験や知識を高め、専門性の強化が期待されます。知識が体系化されていれば、同じ経験から得られる知識量も多くなりそうです。ただし、専門外の経験は、意識していないと不足しがちです。その専門領域に向いていれば素敵ですが、そうでない場合にはいくばくかのリスクがあります。ジョブローテーションをする後者の場合には、社内各所の人間関係や諸事情に精通し、会社について詳しくなりそうです。社内のさまざまな問題に対処するのに有利です。社内の多様な領域を経験をすることで広く適性を探れますが、社外も含めた特定領域のコミュニティで抜きん出ることは簡単ではありません。
 
 連載「音部で壁打ち」の質問を募集中!音部大輔さんが皆さまからの質問に答えてくれます。 こちらでお待ちしています。

 例えるなら、リトルリーグから高校時代まで、各学校でずっと野球一筋でやってきた高校球児と、小中高一貫校で、3年ごとに部活の種目を変えてきた高校球児の違いがありそうです。正解不正解というよりも、それぞれに強みや弱み、有利不利が異なることが想像できます。

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