広報・PR #03

なぜ多くの企業が政治的中立を選ばず、ウクライナ支援のメッセージを発信したのか

 ロシア軍によるウクライナへの侵攻。「起こるかもしれない」という状況が昨年から続いていたが、2月24日、ついに現実のものとなった。戦時下において、企業はどのように社会に向けてメッセージを発信するべきか。企業広報の視点から、社会や生活者とのコミュニケーションのあり方を考える。
 

「ウクライナ侵攻」動いた日本企業


 3月5日現在も多くのウクライナ人および在住する人々が不安な毎日を送っている。欧米を始め世界中の国々や企業がウクライナを支援する動きを見せている。私が知った企業の動きで最も早かったは、3月2日にH&Mが発表した「ロシア国内での全ての販売を一時停止する」だった。翌3月3日には日本経済団体連合会(経団連)がホームページを更新。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)および国際連合児童基金(UNICEF)の活動を紹介した上で、「人道的な観点」からの支援を加盟各社に向かって呼びかけた。
 
日本経済団体連合会HPより

 日本企業の動きは思った以上に「早かった」というのが、私の率直な印象だった。翌3月4日には「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングがUNHCRに人道支援を目的とした1000万ドル(約11億5000万円)の寄付と、衣料品約20万点の提供を発表する。資生堂もウクライナへの緊急支援として100万ユーロ(約1億3000万円)を寄付するほか、全世界の社員に募金を呼びかけ、現地へ支援物資も送る予定だ。他にも日本のIT企業が支援を発表するなど、ウクライナへの支援の輪は日本全体に次々と広がりつつある。
 

変わりつつある企業にとって「政治的中立性」


 一般的に、企業は「政治的発言」を好まない。例えば、テレビ番組内で出演者が政治的に偏った発言を行うと、「企業イメージを損ねる」という理由でその番組の提供スポンサーを降りたといったトラブルは古くから聞く。これは、なぜか?

 企業が世間で意見が割れるような「社会(政治)問題」について発言を行う。すると、主張の「良し悪し」はともかく、何らかのクレームが必ず入る。企業はとにかくこのクレームに弱い。特に一般消費者にモノ・サービスを提供する企業の場合、主張の異なる消費者からの反発をあえて招くことは得策ではない。最悪、不買運動などにもつながる。機会損出を招くだけでメリットは何もないのだ。従って、自社に直接的に関係のない社会(政治)問題について、どこの企業もあえて自社の立場を発信することは少なかった。

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