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なぜ多くの企業が政治的中立を選ばず、ウクライナ支援のメッセージを発信したのか

 

変わる企業の政治的(社会的)中立性


 ところが、東日本大震災以降、こうした表面上の「政治的(社会的)中立性」は徐々に変わっていった。東日本大震災の際には多くの企業が、善意に基づいて寄付金や支援物資を提供する社会貢献活動(CSR)に加えて、社会ニーズや問題に取り組むことにより「社会的価値を創造する」ための新しい活動を始め、その結果として経済的価値を生み出していこうとした。こうした動きをCSV(Creating Shared Value/共通価値の創造)と呼ぶ。

 CSRはその企業や組織にとって「社会的に存在する上での果たすべき責任」だったが、CSVは「社会価値を生み出していく活動」である。協業相手(パートナー)を募る機会も増えた。企業としての積極性やコミットメントがより強く求められる。

 CSV(共創価値の創造)は「短期的な売上アップ」などの狭い視点ではなく、「⻑期的に成功する(企業として持続していく)」ことを最重要課題とした。このための課題定義と目標設定を行う必要がある。例えば、自社の活動に不可⽋な天然資源の枯渇問題、サプライヤーとの良好で持続的な関係、⽣産や販売を⾏っている地域社会への協力、地球温暖化問題、原産国(地)とのフェアトレード、少子高齢化問題など、様々な視点から自社が生み出していくべき共通価値を再定義する必要がある。


 

企業メッセージの進化とSDGs


 こうした企業活動の目標設定にはISOのような世界標準となる「基準」が必要だ。どうやって自社の活動を評価しながら進めていけばよいか。多くの企業が苦慮することになった。

 こうした中、2001年に策定したミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで「持続可能な開発目標SDGs」が全会一致で採択された。「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」=日本を含む先進国のみならず、発展途上国においてもユニバーサル(普遍的)な「基準」として普及することとなった。

 そして、この影響は企業が発する日々のメッセージに大きなインパクトを与えている。企業はこれまで以上に、社会課題に対して敏感になった。いち早く関連情報を収集し、中長期的な社会変化を意識して解決改善に向かって社会との共創活動を実現させていく。このことが、企業が生活者に向けてメッセージを発信していく際の大前提となっている。

 自社はどのような「社会のあり方」を是とするのか。この点をまず明確にしていなければ、企業メッセージを社会に向けて発信することさえ難しい時代なのだ。

 以前は単に「良い企業」であればよかった。社会にとって良い行いをするというイメージが最重要だった。しかし、今では多くの企業がより具体的に自社の活動内容・成果・影響について生活者に向けて情報発信を行っている。自ら生み出した「共創価値」は何なのか。企業としての在り方が問われる。こうした日々の取り組みが、企業が持続していく上でのアイデンティティになるのだ。

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