音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #36

クリエイティブの良し悪しを判断する基準とは? 広告効果をアップする必須知識【音部で壁打ち】

前回の記事:
P&G出身者ばかり? マーケティング業界で成長し、プレゼンスを上げるための考え方
 

消費者アンケートをどう生かす?

 

【質問】

クリエイティブを決める時に、消費者アンケートをとってから決めるべきだと思いますか?音部さんはクリエイティブ案を決める時にはどのような点に気を付けて判断していますか?

当社は一定の量を発信するクリエイティブ表現については、消費者アンケートをとって進めています。個人的な感覚なのですが、「ニーズの顕在化しているワード」や「モデルさんがかわいく写っているもの」に高い評価がついて、消費者の期待を超えるクリエイティブが出て来づらいのではないかと、いつも悩んでおります。クリエイティブ案はどのように評価すべきでしょう。

 春の新製品の季節になると、パッケージや製品を刷新したり、あわせて新しい広告を作ったり、新しい施策を立案するといった活動が増えます。シェアを大きく獲得する理由となり、自身の成長も感じやすいので、忙しくありつつ有意義なプロジェクトになることが多そうです。うまく成功させるために、各活動が期待通りに機能するよう、事前に準備しておくことはとても大事です。
 

3種類のKPIを考える


 広告や販促施策などの各種マーケティング活動のうち、重要なものについてKPIを設定し、効果測定をすることがあります。KPIを計測することで「計画が予定通りに進行しているか、否か」を知るだけでなく、「どのように改善すべきか」という示唆が得られると、持続的な改善や成長につながっていきます。

 そして、実践的にはKPIは3種類に分類できると思われます。すなわち、①「消費者のパーセプション(認識)や行動の変化の度合い」に関する指標、②メッセージが受容される度合いや施策の魅力度など「知覚刺激の質」に関する指標、そして③メディアプランの内容や実際の投下量、施策などの展開率や配荷率など「知覚刺激の量や頻度、到達度合い」といった活動の量に関する指標の3つです。

 ①は消費者の変化についての効果測定ですが、一般的には、パーセプションの変化を計測するより、行動変化を知る方が時間も労力も少なくすみます。消費者が買いたい気持ちになったかどうかを知るためには調査が必要ですが、買ったかどうかは行動結果の観察だけで把握できるからです。いずれの場合でも、ここでは消費者の変化を理解します。マーケティングはいずれ消費者のパーセプションに影響していく必要があるので、これがもっとも重要なKPIであり効果測定です。問題は、そのための費用や時間などの労力が多めにかかることに加え、実際に市場ですでに起きた(あるいは起きなかった)変化であるという点です。結果を受けて強化や修正はできますが、事後的になってしまいます。

 そこで、実際に市場に投入する前に、打ち手を評価し事前に最適化しようと、②や③が考案されました。放送や配信の前に広告や動画クリエイティブの評価をしたり、媒体計画を吟味することで、最初から高い成功率を実現しようという考え方です。



 消費者のパーセプションの変化を促すためにコミュニケーションでメッセージを届けたり、販促施策でブランド体験を届けたりするためには、それぞれの活動は「クリエイティブ表現と媒体」や「施策内容と実施計画」が必要です。抽象化すると、これらのマーケティング活動は「知覚刺激」と「メディア」で構成されています。例えるなら、クリエイティブや施策内容などの知覚刺激は消費者に送り届ける「荷物」で、媒体や実施計画といった知覚刺激のメディアはその「配達方法」です。消費者の変化をうながすためには、質の高い「荷物」を用意しつつ、その荷物を配達するのに最適な「配達手段」を考えなくてはなりません。

 余談ですが、「今回のプロジェクトではテレビ広告をやります」などと「配達手段」からマーケティング活動を立案することがあるかもしれません。この場合、手段が目的化しがちなので注意しましょう。誰かにプレゼントを送るとき、「今回のギフトはクール便で送ります」という配達手段から考えることは少ないと思います。「肉好きな友人」に喜んでもらうために、「美味しいローストビーフ」を送ろうと思ったら、配達手段は「クール便」になった、という順番が多そうです。例外はありますが、マーケティングでも考える手順は同じです。

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