音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #36

クリエイティブの良し悪しを判断する基準とは? 広告効果をアップする必須知識【音部で壁打ち】

 

クリエイティブの評価


 では、今回の質問にあるように、②の「知覚刺激の質」とくに広告メッセージが受容される度合いを事前に評価するときには、何に気をつけるべきでしょう。ビジネスで困ったことがあるときや、判断に迷う場面では、つねに「目的」を振り返ってみることで解決できることが少なくありません。では、そもそもクリエイティブ案を評価する目的はなんでしょう。

 本義的には、「消費者に受け入れられ、効果的にパーセプションの変化を促すクリエイティブ表現であることを確認しておくことで、コミュニケーション活動の成功確率を高める」といったことだと考えられます。「消費者中心に活動していることのデモンストレーション」や、「万が一、失敗したときに備えて言い訳を用意しておく」という実態があるかもしれませんが、あくまで本義があった上でのことです。

 「消費者に受け入れられ」というのは、必ずしも消費者が好きかどうかではない、という点に注意が必要です。消費者が嫌悪し忌避するようなメッセージは、受容されにくいので選ぶべきではありませんが、消費者の好感度が高ければ成功というものでもありません。コミュニケーションが実現すべきパーセプションや行動の変化が実現されることが重要です。「好感をもってもらう」ことが目的であれば、好感度はひとつの指標ですが、「新しい課題に気付いてもらう(例えば、すっきり目覚めるためには”睡眠時間”ではなく”睡眠の質”が重要だと理解してもらうとか、部屋がニオうのは”洗いにくい布製品”が原因だと気付いてもらうなど)」のが目的なら、必要なのは好感度ではありません。むしろ、新しい課題を自分ごととして、自ら発見してもらうことが重要です。

 評価の目的と同様に、このクリエイティブや、媒体計画も含めたコミュニケーション全体の目的を確認しておくことも、とても重要です。考え方のヒントとして、「このクリエイティブがある場合とない場合の、世の中への影響の差」を意識しましょう。事前の評価では、「ある場合とない場合の差」を最大化できているかどうか、把握します。計画した通りにメッセージが受容され、消費者のパーセプションに正しく影響できているかを計測することで、広告に登場するモデルさんについての好き嫌いや、かわいさの要素についての選好を超えた本質的な評価につなげられます。
 

クリエイティブ評価に使いやすい典型的な要素


 クリエイティブの目的は多岐にわたりますが、通常のマーケティング活動では、「(課題の)認知」の段階や、ブランドへの「興味」すなわち購入意向を期待される場合が多いと思います。

 そこで、典型的な評価項目をいくつか提示しておきたいと思います。クリエイティブが表現するコンテンツそのものの評価として、①視聴後にブランドへの興味や購入意向につながっているか、②信じられる内容になっているか、③視聴に値する新鮮さやエンターテインメントの要素があるか、などを確認しましょう。加えて、④トーン&マナーはブランドにあっているか、⑤メッセージを理解・再現できるか、⑥数日後でも覚えているか、といったクリエイティブの諸要素についての評価も有意義です。

 頻繁に広告投下をするブランドであれば、新しく制作したクリエイティブを過去に制作したクリエイティブとの比較で評価できるよう、知見を蓄積したデータベースを用意すると効果的です。継続的に組織の経験値を高めることにもつながります。


 

消費者評価が低い場合の処方


 広告クリエイティブへの評価が低い場合には、クリエイティブを強化しなくてはなりません。ブランドホロタイプ・モデルなどの「ブランド定義書」に示されているベネフィットを的確に描写できるよう、クリエイティブブリーフの精度を高めます。

 もし、ブランド定義に示されているベネフィットを的確に表現しているにも関わらず、消費者の反応が芳しくない場合には、属性の順位転換による市場創造のプロセスを必要とするかもしれません。近著にその方法を示しているので、もし該当する場合には参考にしてみてください。
 
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