TOP PLAYER INTERVIEW #01

男性エグゼクティブは淘汰され、ベテラン女性は出世。世界のPR業界の現在【ブルーカレント・ジャパン 本田哲也】

成長している会社と、そうでない会社の違い

 PR専門メディアである「PR WeeK」が、2018年版のグローバルPRエージェンシーランキングを発表しています。

 この数年は、世界トップ10に大きな変動はありませんでしたが、今回はPR業界の史上最大規模の合併によって誕生した新会社バーソン・コーン&ウルフが3位に躍り出るなど変化が起きています。一方で、1位のエデルマンや2位のウェーバー・シャンドウィックは順位を維持しています。
 
出典:「PR WeeK」Rankings Tables:PRWeek Agency Business Report2018
https://www.prweek.com/article/1457605/rankings-tables-prweek-agency-business-report-2018
 成長している会社と、そうではない会社の違いは何でしょうか。

 要因はいくつかありますが、結局はデジタルやSNSへの対応、消費者インサイトへの理解で差がついていると考えています。エデルマンやウェーバー・シャンドウィックはデジタル対応も早く、世界的なPR会社としての強さもあります。

 3位のバーソン・コーン&ウルフが合併した背景も、それを如実に表しています。バーソン・マーステラ社とコーン&ウルフ社が合併しましたが、規模が大きいのはバーソン・マーステラだったにも関わらず、主導権をもったのはコーン&ウルフでした。

 バーソン・マーステラが新聞社など従来メディアとのリレーションを中心とした古い体質だったのに対し、コーン&ウルフはデジタルやSNSに強く、女性社長を筆頭に北米で驚異的に成長するなど勢いがあったからです。
 

エグゼクティブ層の男性と女性の立場が逆転

 海外では、PR業界は女性が活躍する華やかなイメージを持たれることが多く、従業員の半数以上が女性というデータもあります。ただ、そのイメージとは裏腹に、業界を仕切ってきたのは男性です。

 これには理由があり、海外では政治家やメディアの経営陣と対峙する“重い仕事”は、スーツを着たエグゼクティブの男性が担うものだという古い考えがありました。一方で女性は、フィーが比較的安く、“軽い仕事”だと考えられていた洗剤や菓子、ホテルといった消費者向けの仕事に従事することが多かったのです。

 ところが時代は変わり、何をするにしても消費者理解が求められるようになりました。すると立場は逆転。スーツを着て密室で偉い人と話していた男性に用はなく、“軽い”と揶揄されていた消費者向けの仕事に10年以上、取り組んできたベテラン女性が重宝されるようになったのです。



 その結果、不要になった男性エグゼクティブは淘汰され、ベテラン女性が出世。これまでメンズクラブだった欧米PR業界のエグゼクティブに女性が増えて、最近は40代や50代の女性CEOも見られるようになりました。

 さらに言えば、かつてはオヤジたちに相談していた政府機関やGM(ゼネラルモーターズ)などの重厚長大な企業も「SNSも分からないオヤジはいらないから、チームを若くして女性を必ず入れてください」とお願いしています。

 この流れは日本も同様で、消費者理解に長けた女性のPRパーソンが求められる傾向は、確実に高まっていくでしょう。
 

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