音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #38
脱・OJTという名の放置、マーケター育成で大切な3つのポイント【音部で壁打ち】
3:マネージャー間に「保護者会」的なつながりを構築する
新人たちは、お互いによく似た課題に直面していることがあります。他部門との折衝が苦手だとか、仕事の完了時間を見誤りがちだとか、社内の暗黙知に不案内など、誰にとってもいつか来た道です。また、はじめて新人を担当するマネージャーには「新人が困っていること」がよく分からず毎日が発見だ、ということも珍しくありません。新人時代の自分自身も似たようなものでしたが、ある程度の年数が経っていてあまり覚えていないのです。もし覚えていたとしても、上司の視点で見える景色は随分と異なるものです。
そこで、新人を受け持つマネジャーたちが定期的に集まる機会を設定します。Aブランドに配属された新人と、Bブランドに配属された新人が似たような課題を抱えているとき、それぞれのブランドマネジャーが独自に解決してもいいですが、解決方法や進捗を共有することで、よりよい解決につながるかもしれません。ひとりで考えるよりもふたりで考えるほうがいいアイデアが出てきそうですし、複数の視点から眺めることでより広く深い洞察ができます。この機会は、マーケティング部長やCMOといった、部門を統括する上長が主催するといいでしょう。
最初の会合では、それぞれの「育成計画書」を共有し、お互いにアドバイスしあうのも有益です。全新人の育成計画やプロジェクトリストが、程よく同程度に難しく、必要な経験を等しく得られるよう工夫しましょう。その際、新人を受け持つマネジャーたち全員が、自分のチームや部下だけでなく、マーケティング組織全体の成長を意識することが重要です。会合を主催する部門長やCMOがそうした全体意識を促しましょう。すべてのポジションは固有で、お互いに異なる仕事をしていますが、得られるスキルや経験値の標準化は不可能ではありません。サッカーとオーケストラでは活動内容は大きく異なりますが、「各員が専門性をもつチーム」の中で「個人技の発揮」や「効果的な連携」といったスキルは似ていることでしょう。同じマーケティング組織内であれば、1年目で必要とされるスキルをそれぞれのプロジェクトから得る方法が、きっと見つかりそうです。
私がCMOをしていた組織では、新人を部下にもつマネジャーたちを招いて、毎月ランチ会を主催していました。参加を強制するものではありませんでしたが、かわりに出席者には(CMOの予算から)上質なランチが提供されていました。すでに経験を積んだマネジャーには、若いマネジャーたちに知見を共有してもらう場としても有意義でした。毎年繰り返すことで、この会議体には新人の育成に関する知見が蓄積されていきます。改善・強化を繰り返すことで、よりよく経験値を獲得できる仕組みを構築できると思います。
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