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売れるモノにはワケがある。PR目線で読み解くヒットの構造 #06

映画「カメラを止めるな!」ヒットで再認識した、PRの大原則

ヒットを生んだ「シバリ(条件)」と「ネタバレ厳禁」という2要素

 全国公開の大規模な映画の場合、PR費も数千万円から1億円を超える場合があります。私も前職のTENGA時代、いくつかの映画に出資したり、製作委員会に参加したりといったことを経験しました。その経験からしても、低予算映画をヒットさせるのは、日本トップクラスのクリエイターやPRプランナーであっても至難の業だと感じます。

 『カメラを止めるな!』をヒットさせたのは、敏腕のクリエイターでもPRプランナーでもなく、一般のSNSユーザーでした。しかし、なぜ人々は、この映画を広めたのでしょうか。私は、2つのポイントがあると考えています。

 ひとつは「シバリ(条件)」があるということ。全国公開の作品の場合、どこに住んでいてもほとんどの人が自分の生活圏内で映画を観ることができますが、本作は違いました。都内2館での上映のため、限られた人しか観ることができません。しかも、劇場に足を運んでもすでに満席で入れないケースが多々ありました。一種の希少性というか、“観た人=選ばれし者”のような要素があったと言えます。
 
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 思い出されるのは、2006年末に日本でもオープンした「クリスピー・クリーム・ドーナツ」。当初、東京・新宿の髙島屋近くに出店した1号店では、1時間待ちは当たり前、各メディアがこぞって発信し、瞬く間に全国区の人気となりました。価格設定やイメージ戦略含め、見事なブランディングだったと思いますが、全国へ相次いで出店するようになると行列は途絶え、結果2016年頃からは撤退が続いているようです。

 希少性を保ちながら、ビジネスを拡大させて売上を伸ばす。そのバランス感覚が、ヒット商品を長生きさせる最も大切な要素かもしれませんね。

 そして2つ目は、「ネタバレ厳禁」という共通のお約束が生まれたこと。TwitterやFacebookといったテキストベースのSNSを中心に、ユーザーの「拡散したい欲」を巧みにくすぐったと言えるのではないでしょうか。
 
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 映画の話題がSNS上で拡散されるとき、多くは作品に対する自分なりの感想を添え、それに対するさまざまな反応が寄せられながら、話題が広がっていく……というのが一般的です。しかし、今回は違いました。

 「ネタバレ厳禁」というルールを守ることで、他人同士でありながら、観た人たちの間にはある種の仲間意識が芽生えます。皆が口をつぐみ、「でも絶対に面白いから観ないと損だよ」と発信し、その投稿を見た人たちの間で「よしよし、お前もちゃんとルールを守っているな」という、ネット上の“監視”とは異なる“見守る感”が醸成される。

 何かあればすぐに炎上し、人をボコボコに叩くというネットのネガティブな側面でなく、ポジティブな側面が上手く働き、話題の広がりにつながっていきました。
無名の監督と無名の俳優陣を、他人同士がネット上で一致団結し盛り上げる。PRの目指すところで言えば、“共感”の上の“応援”が自然発生したわけです。
 

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