新ブランド研究
メルシャンから輸入ワインの新ブランドが誕生、縮小傾向にあるワイン市場を活性化できるか【新ブランド研究】
2022/06/24
キリングループでワイン事業を手掛けるメルシャンが、輸入ワインの新ブランド「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」の立ち上げを2月に発表。2カ国のワインをブレンドして日本人の理想の味わいを追求した新商品「メルシャン・ワインズ ブレンズ パーフェクト・ブレンド レッド/ホワイト」を3月に新発売した。新しいブランドの背景にある課題や狙いを分析する新連載「新ブランド研究」として、同社 営業本部 マーケティング部 輸入グループ ブランドマネージャーの大久保利啓氏に、新ブランド立ち上げの背景や商品開発のこだわり、今後のコミュニケーション展開について聞きました。
縮小傾向にあるワイン市場で打つべき手とは?
――現在の国内ワイン市場の現状を踏まえ、輸入ワインの新ブランド「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」を立ち上げた背景をお聞かせください。
ワイン市場は過去ずっと伸長してきましたが、直近5年は縮小傾向にあります。一方で、お酒全体の市場において、ワインが占める割合は6%程度と小さいことから、まだまだポテンシャルはあると捉えられます。そのワイン市場では輸入ワインが約8割を占めており、その活性化が市場全体を盛り上げることにつながると考えています。
実はコロナ禍の影響で家にいる時間が増え、家庭用ワインは増加の兆しが見えました。同様にキリンビールが販売するクラフトビールも増加傾向なのは、外出による楽しみがない代わりに家の中で「非日常感を味わいたい」と、日常的に飲んでいるお酒とは少し異なるものを求めているのでしょう。
一方で、輸入ワインの大きな課題は、商品のラインアップが入れ替わってもお客さまにあまり気づかれないことです。家庭用ワインの注目度がわずかに上昇している今、新ブランドを立ち上げて新しいニュースを発信していくことが大事だと思っています。
――そこから消費者の関心を引くわけですね。他に必要なことはありますか?
もうひとつ大事なのは、輸入ワインを購入するハードルを下げることです。輸入ワインのラベルは、すべて輸入元の国の言語で書かれていることが多いので、ワインの中身がよく分からず、選びにくいというハードルがあります。カベルネソーヴィニヨンやシャルドネといったワインの品種を詳しく知っている人であれば、その品種によって味わいの傾向を掴むことができるでしょう。しかし、ワインの品種に詳しくない人であれば、そもそも品種を覚えなければならないため、購入のハードルが上がってしまいます。
今回の「メルシャン・ワインズ」という新ブランドを立ち上げることで、お客様にとって選びやすい輸入ワインとなり、購入するハードルを下げ、多くのお客様に楽しんでいただくきっかけになればと考えています。また、メルシャンは、おいしい酸化防止剤無添加ワインといった国内製造ワインをつくるメーカーといったイメージを強く持たれています。そのため、お客様にはメルシャンでもいろいろな輸入ワインを取り扱っていることを知ってもらい、輸入ワインに馴染みがない人には安心して購入できるようにすることも狙っています。
ユニークなブレンドの発想で、日本人にとって理想の味わいを実現
――今回、ブランドの立ち上げとともに新発売した商品の狙いをお聞かせください。
今回は、「メルシャン・ワインズ」から「ブレンズ」と「ボルドー」という2つの商品を発売しました。目指したのは、日本のお客さまが一番おいしいと思える味わいの追求です。調査結果から、お客さまがワインに最も求めるのは、「果実感の豊かさと味わいの奥深さ」であることが分かりました。一方で、既存の商品に対して、まだ十分に満足していないという結果も得られました。
ワインは、その土地の味を大事にすることが多く、その味が売りにもなっているお酒です。しかし、それゆえに個性的であり、味の広がりが限られ、日本のお客さまが求める味わいをひとつの品種やひとつ国のワインで叶えることが難しいと考えました。そこで、ブレンズではお客さまが求める味わいを最大限に引き出すため、2つの国のワインをブレンドし豊かで調和のとれた味わいを追求しました。
ワイン業界では、品種をブレンドするということはごく自然に行われていることですが、2つの産地(国)のブレンドというのは、お客さまにとっては新しくて驚きがあり、興味を持ってもらえるきっかけになると考えました。ブレンドの代表例としてコーヒーがありますが、ワインもブレンドすることで味わいがまろやかになり、飲みやすくなるという印象を持ってもらうことができると思います。
実際にお客さまからは、「ワインのブレンドがあるのか」「試しに飲んでみたい」「それぞれのいいとこ取りをしているから、おいしいに違いない」といった反応が見られています。一方で、ワインに造詣が深い人にとっても、全く異なる産地のワインをブレンドすることは、珍しいことから「ユニークなワインだ」という反応も得られています。