米田恵美子琉 市場創造の「すすめ方」 #03
生活が苦しい時代の「消費のつくり方」。「SKⅡ」が高級スキンケア市場を拡大する背景【インサイト・ピークス 米田恵美子】
消費者が“お財布のヒモを緩める”商品とは
日本の人口は、年々縮小しています。その流れは、これからも止まりそうにありません。そして、大金持ちの方は別として、私たちの多くは限られた予算の中で生活していています。最新の国民生活基礎調査(平成28年)では、生活意識が「苦しい」とした世帯は 56.5%になります。
人口は減少し、2人に1人は今の生活ですら「苦しい」と言っている中で、新しい市場を創造したり、市場を拡大したりできるのでしょうか。
生活が苦しいと言われれば、商品やサービスを何とか安く提供しようと考えがちですが、その場合は競合同志の価格戦争で「市場が縮小するリスク」に気をつけなければなりません。
そこで「より安く」と考えるのではなく、苦しい生活を少しでも楽しくできるような商品やサービスを提供しようと考えると、新しい市場を創造するチャンスが広がるのではないでしょうか。
私たち自分自身のお金の使い方を振り返ってみても、苦しい生活の中でも、お財布のヒモを「締める時」と「緩める時」があると思います。
では、どのような時にお財布のヒモを締め、その逆にヒモを緩めるのか、ご自身のお金の使い方を思い返していただくと、面白いかもしれません。
私は、長年さまざまな業界で仕事をしてきた経験から、人は必要経費に関しては「何とかして節約しよう」とお財布のヒモを締める傾向があるのに対して、必要とは言えないかもしれないモノやコトに関しては、お財布のヒモを緩める傾向があると見ています。
生活は「苦しい」のに、必要でもないのにお財布のヒモを緩めてしまうモノやコトとは、何でしょうか。
多くの場合、それは「苦しい」生活を少しだけ忘れさせてくれる、“ちょっとした楽しみ”を提供してくれるモノやコトだったりします。
例えば、旅行など観光産業は伸びています。
観光庁が2018年1月16日に発表した「2017年訪日外国人旅行消費額(速報)」は4兆4161億円(前年比17.8%増)で過去最高となりました。
外国人にとって、日本という国が“ちょっとした楽しみ”を提供できるモノやコトに満ち溢れているからこそ、多くの観光客に来ていただき楽しんでもらえていると言えます。