米田恵美子琉 市場創造の「すすめ方」 #03
生活が苦しい時代の「消費のつくり方」。「SKⅡ」が高級スキンケア市場を拡大する背景【インサイト・ピークス 米田恵美子】
スマホゲームに数百万円課金する人の心理
かっこよくなりたい、きれいになりたい、モテたい、強くなりたい、勝ちたい、褒められたい、崇められたい、いい家に住みたい、いい車が欲しい。人は、こうした何かを手に入れたいという権力欲や承認欲、達成欲、物欲、収集欲など多くの欲を持っています。しかし全ての「欲」を満たすことは、金銭的にも社会的にも現実にはなかなか難しいことです。
そうした中で、それらの「欲」を非現実空間で味わうことで、「苦しい」現実生活とは別のパラレルワールドを生きることができる、そんな場所を提供したのがスマホゲームでした。
中国で成功しているスマホゲームの中にはVIPシステムという「ゲーム内の特権」を販売しているものがあります。
お金を払うことで、ゲーム内の位が平民から労働者、中級VIP、王様VIPへと昇格して、ゲームによっては数万円から数百万円を課金することで最高ランクの「神様VIP」の特権になることができます。
王様や神様のレベルになると、あらゆるもの(キャラ、武器、能力など)が最高級になり、ゲーム内では勝ち放題です。そんなゲーム内のVIP特権を高額で購入しているユーザーは、必ずしもお金に余裕のある人とは限りません。
現実生活は苦しい中、ゲームというパラレルワールドで、強い自分・勝つ自分を楽しむために、現実生活は節約してでもゲーム内でお金を使うというユーザーが多くいるのです。
お酒やタバコ、アイスクリームなどの嗜好品なども、“ちょっとした楽しみ”を提供してくれます。車や住まい、インテリアなども、ちょっと楽しいモノやコトです。
そして前回、ご紹介した柔軟剤も、多くの商品が“ちょっとした楽しみ”を謳っています。
15年前、衣類を柔らかく仕上げる製品であった柔軟剤は、レノアの発売で「着ている間のにおいを防ぐ」製品に発展し、今では「着ている間に香って、日々をちょっと楽しくしてくれる」製品に進化したのです。
私が経験した柔軟剤の進化の過程は、市場創造・拡大のヒントだと考えています。