【速報】カンヌライオンズ2022現地レポート #2

カンヌライオンズ2022はクリエイティブBtoBの新設で29部門へ、9トラックにも改変あり

 

カンヌライオンズ2022の部門から見える変化


 さて、今回の報告では、「クリエイティブBtoB」部門が増えて29部門にまでなった部門についての話と、そこにも関係することとして、数は9つのままですが少し改変されたトラックについてお伝えしていきましょう。

 カンヌライオンズ2022のトラックは9つあり、29の部門がどこかのトラックに割り振られているのですが、詳しくは表組になっている「2022 Awards Map」でご確認いただくとして、ここでは変化のあった点についてのみ解説します。
 
2022 Awards Map。トラックごとの部門をまとめたもの。運営側が出している。

 まずチタニウム・トラックに含まれるチタニウム部門は今まで、フィルム部門などが含まれるコミュニケーション・トラックに入っていたのですが、トラックとして独立した格好です。クラフト・トラックにはデザイン部門(旧コミュニケーション・トラック)が、エクスピリエンス・トラックにはイノベーション部門(旧イノベーション・トラック)とモバイル部門(旧コミュニケーション・トラック)が加わりました。

 新設のエンゲージメント・トラックは旧リーチ・トラックに今回増設されたクリエイティブBtoB部門が加わった形です。同じく新設のストラテジー・トラックは旧インパクト・トラックにクリエイティブ・エフェクティブネス部門を加えた形、同じく新設のクラシック・トラックは旧コミュニケーション・トラックを引き継ぐ形で、含まれたのはいわゆるマス広告中心の4つの部門となりました。

 私は、これらのトラックと部門の内容やそれぞれの相違をすべて把握するのは、無理だと思って、あきらめた方が良いと思っています。29の部門についてはざっと概要を把握しておいたほうが望ましいですが、それも概要でよいでしょう。ただし、応募するのであれば、どのトラックのどの部門(さらに部門の下のサブカテゴリー)に応募するかは、結果に大きな影響を及ぼすので、その解説(英文Webサイトに載っています)をよく読むべきです。

 
地下会場で見ることが出来る事例ボードや作品。PRが部門名でENGAGEMENTはトラック名。ショートリスト以上が掲示される。
 
ブロンズ以上の受賞で貼られる。サブカテゴリーごとの贈賞で、この写真の場合、シルバーとブロンズを受賞。

 今回はひとつだけ、フィルム部門とフィルムクラフト部門の違いについて説明しておきましょう。これはカンヌライオンズが公式に言っていることではなく、様々な情報を元にした私の解釈です。

 フィルム部門はカンヌライオンズ発祥の1954年からある部門なのに対して、フィルムクラフト部門は比較的最近の2010年にできました。表現は一般に「IDEA×EXECUTION」で構成されると言われています。日本語で言うと、「発想×定着(仕上がり)」ですね。

 フィルム部門では、このIDEA×EXECUTIONの両方が評価の対象になるのですが、どちらかと言うと、IDEAのほうに重点が置かれてきました。それに対して結局、受け手が見るものはEXECUTION(完成した動画)なのだから、その点を重視した部門もつくるべきだという趣旨で開設されたのがフィルムクラフト部門です。ここで言うクラフト(Craft)とは、EXECUTIONとほぼ同義と考えてよいでしょう。あるいは、EXECUTIONの質を高めるための様々な技(撮影やシナリオ、編集など)だと理解してください。

 フィルム部門はIDEA重視(IDEAを効果的に実現するためのEXECUTIONも同時に評価はしますが)、フィルムクラフト部門はIDEAよりもEXECUTION重視ということになります。つまり、フィルムクラフト部門では極端に言えば、企画のIDEAが凡庸でも、撮影が素晴らしければ、高次の賞も有り得るということになります。とまぁ、一生懸命説明しましたが、それでもだいぶ、分かりにくいかもしれません。

 第3回目と第4回目のレポートは、日本に帰国後のなるべく早いタイミングで、皆さんにお届けするつもりです。
 
ボランタリーな運営で行われている日本人向けの会期中勉強会。皆さん、とても熱心だ。

 
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