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国連難民高等弁務官事務所の広報日記 #02

サッカーW杯ロシア大会の出場国で、「難民問題」を抱えているのは何カ国?【UNHCR 守屋由紀】

「難民」を扱う広報としての流儀

 広報として仕事をする中で、新聞、雑誌、テレビなどのメディアをはじめ多くの方から問い合わせをいただきます。

 「卒業論文で難民問題を取り上げたいのですが…」という学生さんからの電話や、「難民の最大受け入れ国はどこで、実績は?」などというメディアの方からの問い合わせもあります。

 ただUNHCRの「広報」は、無料相談所でも、情報提供サービス機関でもありません。

 「難民について、いちから教えて欲しい」などという問い合わせは、「ホームページに公開されている情報があるのでそれをお読みいただき、その上で疑問があればお答えします」と対応するようにしています。“高ビー”に思われるかもしれませんが、命の危険にさらされている多くの難民のためにある仕事です。

 問い合わせをいただいたメディアには、データひとつについても必ず「いつ、どこで、どういう切り口で取り上げるのか」を聞きます。データを都合のいいように使われ、世界中の難民に不利になるような切り口で取り上げられるのを避けるためです。

 データというのは取り上げようによっては真逆の結果をもらすことがあります。過去にもトラブルが発生し、先方に抗議したこともあります。
 
 一方で難民についてよく勉強し、問題解決のために記事やニュースなどで取り上げてくださるメディアの方も多くいます。こういう方からの問い合わせには、「こういうデータもあります」とお問い合わせいただいた以上の情報を提示したり、「おっしゃる切り口では無理があるかもしれません。でもこちらの方は…」と提案することもあります。話が膨らみ、電話対応が30分以上に及ぶこともしょっちゅうです。

 だからネタにつまると私のところに電話をしてくる記者や放送関係者もいます。「守屋はネタ元」と思ってくださっているのでしょう。

 こうした方たちへの対応で、大切にしていることがあります。

 記事が掲載された、または番組が放送された後、なるべく早くお礼や感想を電話やメールで伝えます。ある記者から言われたことがあります。

 「完璧を期して書いた記事でも、反応は常に気になるもの。掲載された日は不安です」と。

 だから私が電話やメールで謝意を伝えるとほっとするようです。そして関係がより深まり、私たちの活動のよき理解者になってくれるのです。
 
 私たちが日本で広報する上で最も重要な仕事の1つが毎年実施している「UNHCR難民映画祭」です。今年が13回目で、9月7日から10月7日の期間に、東京、札幌、名古屋で開催します。

 恋愛やコメディ、アクションといったように、「難民映画」というジャンルが存在するわけではありません。「難民問題」をテーマにした映画を集め、無料で一般の方に観賞していただくイベントなのです。

 今年のテーマは「観る、という支援。」です。韓国人初のUNHCR親善大使である俳優、チョン・ウソンがイラクの国内避難民キャンプを訪れたときの出来事を取り上げた『君たちを忘れない~チョン・ウソンのイラクレポート~』、レバノン難民キャンプで育ったパレスチナ難民の女性が起業に挑戦する姿を描いた『ソフラ~夢をキッチンカーに乗せて~』など6作品を上映します。
 
UNHCR難民映画祭 http://unhcr.refugeefilm.org/2018/
 ぜひ、この機会に会場にお越しいただき、“難民のいま“を私たちと一緒に考えましょう。

 
続きの記事:
大坂なおみ選手「I’m sorry」の誤訳から考える、「伝え方」の難しさ【UNHCR 守屋由紀】
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