【速報】カンヌライオンズ2022現地レポート #04
カンヌライオンズ2022の主な受賞作を紹介、見えてきた大きな傾向は「DE&I」
カンヌライオンズ2022の傾向②:ヘビーな話題を軽めのタッチで身近に
DE&Iがらみの事例は、どうしても大上段な物言いになりがちだったり、深刻なトーンのものが多かったりするように思います。もちろんヘビーな話題や課題であるなら、そのまま表現することは悪くはありません。
しかしながら、受け手の側はどうしても少し“食傷気味”になり、効果に繋がりにくいケースもあると思います。昨今の日本では、(これもけっして悪いことではないのですが)あまりにも様々なところでSDG’sと言われ過ぎて、企業が何かメッセージを発信しても少し受け取ってもらいづらくなっているようにも思います。
そこで場合によっては、「少し軽いんじゃないの?」と思う人も出そうな表現が出現しています。ある種の軽いタッチで身近で実効性のある効果を狙ったものでしょう。
その代表作は、ブランド・エクスピリエンス&アクティベーション部門ゴールド他を受賞した、コロナビールによる「PLASTIC FISHING TOURNAMENT」です。海洋プラスティックごみをなんとか減らすために、誰かの“環境を大切にする心”に訴えるのではなく、プラごみが多過ぎて漁に支障をきたしている漁師に対して、なんと“プラごみを回収した獲得量を競うトーナメント”を開催したというものです。
コロナビールは獲得量に応じて漁師に賞金を出し、いわばプラごみの被害者である漁師を支援しながら、20トン以上ものプラごみを減らしたと言います。この施策は、メキシコ、コロンビア、ブラジル、南アフリカ、イスラエル、中国など世界各地で行われました。
そんなヘビーな課題に「なぜトーナメント形式を用いるの?」と、言い出しそうなお堅い人もいそうですが、きちんと成果も挙げ、カンヌライオンズの審査員も高く評価しました。
さて、もう一つ、フィルム部門グランプリ他を受賞したChanel 4の「SUPER. HUMAN.」にも、僕としてはこの特徴の気配を感じました。
英国の公共テレビ局Chanel 4が制作するパラリンピック・キャンペーンのシリーズの1本。リオの時などは、パラリンピック選手のSUPERな素晴らしさをみごとに描いていましたが、TOKYO2020向けの今回は、多くの選手達の日常を描き、「寝ぼけて起床するシーン」や「練習を面倒臭く感じるシーン」などが描かれます。
「To be a Paralympian there’s got to be something wrong with you. (パラリンピック選手になるには、大変なこともきっとある!)」というコピーを掲げ、選手のSUPERではない側面を描き、最後には競技に使うボールが飛んで来てSUPERという文字を打ち砕き、HUMANだけが残るという仕掛けです。
パラリンピック選手は素晴らしいと真正面から賛美するのではなく、ある種の軽めのタッチで、より身近な形でメッセージした秀作だと思います。
4回にわたってカンヌライオンズ2022のレポートをお届けしました。2019年以来3年ぶりのリアル開催で、どんな風になるか期待と不安が入り混じっていたのですが、私としては例年以上のエネルギーを感じました。
カンヌライオンズにはやはり、「これからの広告コミュニケーション」に関するヒントや刺激がたくさんありました。私としては、これからもウオッチングを続けていこうと思います。
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