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大規模通信障害のKDDI広報対応は、なぜ評価されたのか? 自己保身に走らなかった社長を専門家が分析

 

不祥事よりも、不誠実さを批判される可能性もあった


 一般論だが、経営トップはあくまで「経営のプロ」である。必ずしも自社製品やサービスの技術仕様などについて詳しくないことも多い。従って、記者会見などの公の場では詳細説明について専門性の高い担当役員や担当部長などに任せることも理解できる。

 また、「間違ったことを言ってしまってはいけない」「責任追及を極力避けたい」という「守り」の気持ちが強いと、副社長や顧問弁護士など、とにかく自分以外に「責任をとれる誰か」を何人も同席させたがる傾向がある。特に質疑応答での記者との厳しいやり取りが想定される場合には、”クッション”となる役割を自分の隣に置きたがるのだ。

 もちろん、こうした気持ちは理解できる。一般的なPR会社が用意するメディアトレーニングのマニュアルにも、こうした「守り」の対応が良いとされていることが多い。だが、今の時代の記者会見の対応として、私は必ずしもこの対応が望ましいとは思っていない。何より、自社の不祥事を他人事のように振る舞うように見え、責任逃れをしようとしているという印象を持たれた場合、すでに起こってしまった不祥事以上の企業ブランドの毀損が長期に渡って生じてしまうのだ。

 特に「自己保身」に走る経営トップに対してのネットやSNS上の反応は至って厳しい。そして、利用者を含む生活者からのネット上の評判(レピュテーション)は、特にコンシューマー企業にとって容赦なくその後のビジネスの有り様に大きな影響を及ぼす。不祥事そのものよりも大きなダメージを企業と経営者に与えるのだ。



 今回のケースでは、企業側の責任が記者会見の時点では明確でなく、原因究明と再発防止策の検討はこれから、という状況だった。こうした不確定要素が多い時点で開かねばならない記者会見ほど、トップによる対応は逃げ腰で保身的に見えてしまうのが一般的だ。

 私はこうした不確定な状況だからこそ、今回の記者会見のように、トップ自らが「攻め」の姿勢でメディア対応を行うことで、①責任の所在を明確にした上で、②可能な限りの説明を行い、③利用者や生活者全体への状況理解につなげることが重要だと考える。その結果として、④原因究明後の再発防止策や企業責任に関する企業側の決定を受け入れやすくなるのだ。

 企業にとって重大な不祥事が生じたときに、自ら謝罪会見を行うことは、どんな経営者にとっても決してやりたいことではない。一方で、利用者や生活者はこのようなときだからこそ企業トップの対応に注目し、そこに不誠実な対応があれば「不祥事そのもの」よりもその「不誠実さ」を非難するものなのだ。企業や組織において、問題が発生しないことが大事であるのはもちろんだが、仮に不祥事が起きてしまった場合には、今回のKDDIの事例を参考にしてみてはいかがだろうか。
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