新ブランド研究

一休から“宿”特化型SNS「YADOLINK」が誕生、なぜこの時代に独自SNSをつくるのか?

 

「YADOLINK」が他のSNSと異なる点は何か


 Instagram、Twitter、TikTokといった多くのSNSがある中で、一休が宿特化型のSNS「YADOLINK」をスタートする狙いは、“宿好き”な人たちを集約し、新しい発見や出会いを創出することである。

 既存事業である検索サイトの「一休.com」は膨大な顧客基盤があり、ユーザーの閲覧履歴に基づいたレコメンドやパーソナライズした提案によって、いかにスムーズに心地よく、ニーズに合った宿を予約できるかにフォーカスしている。これはInstagramやTwitterといったSNSと同じく、自分の好きな情報のみが画面に流れてくるのと同じだ。しかし、その反面、自分の好きな情報ばかりがユーザーに届いてしまう。

 そこで「YADOLINK」では、パーソナライズされた情報だけではない、偶然の発見を提案するUIの設計になっている。若者から人気を集めるTikTokのUIと似ているが、異なる点として「今後短尺の動画などのサービスを開始した場合でも、宿やホテルに特化したSNS であるため、現時点で直接的な競合になることはない。」と佐藤氏は語る。
   
  

SNSで広告モデルを採用しない本当の理由とは


 SNSのマネタイズは一般的に広告だが、「YADOLINK」では広告が入ることにより情報の信頼性が損なわれてしまうと考えているため、現状では、短期的なマネタイズはしないという。「『一休.com』でも検索時に上位表示されるような広告を実施していません。「YADOLINK」では、そういったマインドも引き継いでいます」と佐藤氏。あくまでも『一休.com』への予約を促す導線として送客をすることで、SNS媒体としての価値向上に取り組む考えだ。
   

 LTVという側面からも「『YADOLINK』では、“宿好き”な人たちが、何年経っても常に盛り上がり続け、心置きなく“宿愛”を語ることができるような環境づくりや、コミュニティ形成を行っていく予定です。さらに『宿といえば、YADOLINK』というように、最初に想起されることが重要です。そうしたブランディングや認知拡大を図っていきます」と語ります。

 また、今年中に投稿数2万件を目指し、イベントなども実施していくほか、ユーザー同士の繋がりを意識したコミュニティづくりをしていく。先月、初めてのフォトコンテストとなる「第一回YADOLINK投稿キャンペーン」が開催された。ハッシュタグ「#今まで泊まって一番よかった宿」をつけて投稿することで参加できるもので、61名の投稿があった。今後もテーマを変えながら定期的に実施をしていくという。


 
第一回YADOLINK投稿キャンペーンでグランプリに輝いた投稿
 

上質な体験を通じて、旅行業界全体を盛り上げたい


 将来的にはSNSアプリも開発予定だが、Webサイトからアプリへの完全移行ではなく、より身近に、便利に利用したいと考えている人だけアプリを利用してもらう考えだ。現在は投稿に「いいね」を付けられるほか、先月コメント機能も追加された。今後も機能追加やサービス向上を図り、ユーザーの満足度も上げられるように注力していく。

「『YADOLINK』は、あくまでも宿を軸に旅行を組み立てられる特化型のSNSサービスです。ユーザーが旅行体験を同じ熱量で語り合えるプラットフォームであると同時に、閲覧するだけだった人が投稿するようになったり、実際に投稿された場所に行ってみたり、ユーザーが活発に利用し、その行動に変化が起こせるようになることに期待しています」と、佐藤氏は期待を寄せる。

 同社では、上質な宿泊体験の共有ができる仲間を増やすサイクルをつくることで、旅行業界をより一層盛り上げていく考えだ。

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