音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #42
外資系と日系企業、マーケター育成で優れているのはどちら?【音部で壁打ち】
外資系の原理
外資系で一緒に働くメンバーは、一般的には多国籍です。英語で仕事をしますが、必ずしも全員が英語を母国語としているわけではありません。つまり、日々のやりとりはあまり上手ではない英語でなされます。言葉が心もとないうえに、長期にわたる人脈や阿吽の呼吸、文化背景などが共有されていないこともあり、コミュニケーションではロジック(≒論理構造)やエビデンス(≒論理的な根拠)に依存しがちです。
自由なフォーマットで書かれている文書と、定型フォーマットで書かれた文章を比べたとき、拙い英語でも意味が通じるのは後者です。曖昧な目的設定と、数値化されたものを比べた場合も同様です。こうした定型フォーマットや数値化などの工夫も含め「ロジックとエビデンス」を共有することで仕事がしやすいよう設計されています。外資系の方々が論理的に見えることがあるのは、言葉がつたなくてもロジックがコミュニケーションを助けてくれることがあるからかもしれません。
母語や共に過ごした時間ではなく、「ロジックとエビデンス」に依存している組織であれば、転職しても最低限のオリエンテーションで仕事をはじめやすいでしょう。専門性に依存したキャリア形成とも相性がよさそうです。こうした事情は、人材の流動性に寄与しているようにも思います。平たく言えば、転職しやすい傾向にあると言えそうです。
日系企業の原理
それに対して、いくつかの日系企業ではこうした構造や定型フォーマットをもたないこともあります。母国語と終身雇用を前提とし、時間をかけて阿吽の呼吸や固有の企業文化に親しんでいきます。普遍的なロジックや客観的なエビデンスというよりも、属人的なつながりで組織を支えます。定期的なジョブローテーションを通して、さまざまな部門に人脈を広げ、会社の専門家を育成できるような制度が整っていることが多いと思います。大きな会社になると、社内の摩擦が強くなって外患以上に内憂が大きくなる、という事情も理解できます。こうして社内の人脈を盤石にしておくことは、理に適った対策かもしれません。
ずいぶんと前のことですが、日本企業に勤めていたときに丸一日続く会議が毎月いくつもありました。長い会議に出ていると、なんだかムダな時間を過ごしているように思えて文句を言いたくなることがあります。でも、ひょっとしたら、そうした会議には「人脈や親近感をはぐくむ効果」があったように思います。長い歴史の中で醸成されてきた企業文化であるなら、旧弊であるとして会議時間を短縮すると、社内の人脈による安定性などが損なわれるかもしれません。事前に「ロジックとエビデンス」などを整備しておくと安心です。