広報・PR #05

Google日本法人「退職パッケージ」にみる“ゆでガエル現象”

 

Google「退職パッケージ」の実態とは


 Googleは2023年1月に全世界で1万2000人を解雇すると発表した。Google日本法人の社員は労働組合を結成し、3月2日に都内で記者会見を開いた。解雇に関する法的な問題について、ここで論ずるつもりはない。この一連の騒動は、当事者間で話し合いが持たれ解決されるか、司法の場で争われることになるのだろう。

 私がこのニュースに接して、最初に心に浮かんだのは“ゆでガエル現象”という言葉だった。カエルは、いきなり熱湯に入れるとびっくりしてすぐに逃げ出す。しかし、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくと逃げるタイミングを失い、“ゆでガエル”となる。つまり、死んでしまうのである。

 もちろん、“ゆでガエル”とは比喩表現である。環境変化に対する人々の対応をカエルに喩えたに過ぎない。しかし、私はこの表現の本質は、忍び寄る危機に実は当人が「気が付いている」点にあると考えている。忍び寄る危機にうすうす気づいていながら、現状の居心地の良さが邪魔をして「自ら変わっていこう」とする気概が削がれてしまっている状態を暗示しているのだと感じた。

 いくつかの報道によると、今回の解雇に際して会社側が提示した所謂“退職パッケージ”(退職勧奨)は以下のようなものだ。

・ 2023年3月2日から5月31日までの90日間の期間、通常の給与が支払われる
・ 解雇の手当を支払うが、今日より14日以内(3月2日~16日午前7時まで)に退職に合意すると多く支払う
・ 未使用な休暇についての支払い
・ 再就職斡旋サービスの利用
・ ビザのサポートや、メンタルヘルスサポート

 報道が確かであれば、この“退職パッケージ”は、かなり充実したものだと評価せざるを得ない。もちろん、実際に解雇が行われれば、就労ビザの関係により日本で働けなくなってしまったり、描いていたキャリアとは違ってしまったりなど、さまざまな問題が起こる人もいるだろう。苦しい状況に追い込まれる人に寄り添いたい気持ちもあるが、むしろ私は「さすがGAFAの一角を占めるGoogleだけのことはある」と思った。同時に、在職中の待遇と福利厚生の良さを以前、社員から直接耳にした日のことを思い出した。まだ当時は、Googleの日本法人が設立されて間もなくの頃だったので、本社は渋谷区の桜丘のタワービル内にあった。今から15年ほど前である。
当時、話したGoogle社員の給与や賞与など、待遇や福利厚生は確かによかった。一方で、企業業績や個人評価によっては有無を言わさず、厳しい結論が出されてしまうリスクについても語ってくれた。

 私自身、外資系企業、特に金融やIT企業は、そういうもの(人員整理のリスクに対する“前払い”として高待遇を得ている)と理解していた。従って当時、話を聞いても特に驚くことはなかった。

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