広報・PR #06

JAL アクセス集中でキャンペーン中止、原因は宣伝とPRの相乗効果の見過りにある?

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JAL スマイルキャンペーン中止の原因


 JAL(日本航空)は、2023年3月9日午前0時からすべての国内線の片道料金が6600円になる「JAL スマイルキャンペーン」(国内線航空券タイムセール)を開始した。しかし、開始直後から申込みが殺到し、Web サイトはほぼ接続できない状態となり、その後も復旧の見込みは立たず、タイムセール以外の国際線の予約などにも影響が及んだ。同社は4、5、6月搭乗分の国内線の航空券販売を同日14時30分に中止することを発表し、HPで謝罪するに至った。
  
引用:日本航空株式会社(JAL)2023年3月9日のプレスリリース

 今回の騒動の原因については、すでに多くの記事が出ている。
 
  • ANA(全日空)が2023年2月に発売開始した「ANA SUPER VALUE セール」に対抗したキャンペーンであること
  • ANAのすべての国内線の片道料金が、平日7000円、土日1万円という価格に対し、JALは一律6600円(一部例外あり)と「話題性」と「お得感」の高いキャンペーンだったこと
  • 羽田~石垣島などの長距離路線も同じ金額で購入できたこと

 中止となった原因は、同社Webサイトに予想を超えるアクセスが集中したことだと報道されている。こうした期間限定で実施するキャンペーン上の「騒動」は、JAL以外にもよくある話だ。近年では、2016年のクリスマス・イブに、宅配ピザチェーンが行ったキャンペーンが全国の店舗を巻き込み大混乱となったことが記憶に新しい。

 こうした騒動が起こると、ネット上では「なぜこういう事態を予測しなかったのか?」などのコメントをいくつも目にする。消費者視点で考えれば、「①キャンペーンを計画→②宣伝(広告)を行う→③Webサイトに予約が殺到→④ Webサイトのサーバーがダウン→⑤中止の発表・謝罪」というシンプルな一連の流れを、どうして大企業であるJALが未然に予測し、防ぐことができなかったのかと考えるのも頷けるだろう。

 JALは搭乗客の安心・安全を扱うブランドでもある。今回、キャンペーン上の騒動とはいえ、多くの顧客を巻き込むことになったことは大問題である。正直、私も事前に何らかの対策を講じることができたのではないかと疑問に思う。また、JALというブランドにとっても、悪いイメージを持つ人が増えたのではないかと懸念される。

  一方で、私自身もこうした大規模キャンペーンを、マーケティングやコミュニケーションを通して支援している立場でもあり、企画者側がリスクの予測をまったく行わないことなど、ありえないこともよく分かっている。そして、今回の原因は、おそらく横の連携が上手くいかなかったのではないかと考える。いわゆる「蛸壺(タコツボ)化」と「ホウレンソウ(報連相)」に問題があったのではないかと想像が及ぶ。

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