【特別対談】企業マンガの可能性と未来 #02

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を手がけるコルクが「企業マンガ」に力を入れる理由【特別対談:コルク 佐渡島氏×ナノベーション中野】 

 

企業マンガを通して、コルクとして成し遂げたいこと


中野 コルクとして、企業マンガを通して成し遂げたいことは何ですか。

佐渡島 まずは、マンガ家を喜ばせたいと考えています。そして、マンガ家が企業マンガを手掛けて、その企業の売上や社員の満足度などを目に見える形で向上させて、マンガ家自身も成長できたら、これほど嬉しいことはありません。

中野 企業が成長する中のコミュニケーション活動のひとつにマンガがなるといいですね。その中で、マンガ家が活躍の場を少しずつ見つけてくれるようになれば、嬉しいです。

佐渡島 それはコルクとしても、私自身も非常に嬉しいです。以前『ドラゴン桜』で有名な三田紀房さんが著者の『エンゼルバンク』というマンガをつくりました。リクルートエージェントさんと協力してつくった転職エージェントが主人公のマンガです。私はリクルートの社内を自由に取材させてもらった時点で、転職市場をテーマにしたマンガは実現できると感じました。

2008年のリーマンショックが起きて転職市場が冷え込んだのですが、リクルートエージェントだけは、他社と比べるとそこまで大きな影響を受けなかったんです。リクルートエージェントも特別な対策はしていなかったので、下げ幅が少なかったのは『エンゼルバンク』のおかげだという話も冗談混じりに言ってもらえたりしました。私自身も本当だろうかと少し疑う気持ちもありますが(笑)、企業を舞台にしたマンガの影響力の大きさを感じました。
  
『エンゼルバンク』のエピソードについて話す佐渡島氏

中野 まさに、マンガにファンがついて、応援される存在になるといいですね。

佐渡島 そうなんですよ。マンガって主人公が応援してもらうことができるんです。たとえば、スラムダンクであれば「桜木、頑張れよ」という気持ちで私たちは読むので、応援したくなる主人公をどうつくるかは重要なポイントです。

そういう主人公を生み出すためには、まず作者が主人公を応援しなければいけません。これはすごくシンプルなのですが、自分が応援したくなる人をつくり出すことは、非常に難しいことなんですよね。

中野 それは簡単に出てこないですよね。
  
『企業マンガの可能性について語る佐渡島氏(左)と中野(右)

佐渡島 だから企業マンガは、この企業をみんなが応援したくなるように作らないといけません。つまり、その企業の中で応援される人を作らないといけないんです。実は、それはすでにマンガにとって重要な要素が含まれているので、マンガ家にとっても成長の機会になることは間違いありません。

私がこれまで関わったマンガであれば、『宇宙兄弟』は宇宙産業、『ドラゴン桜』は教育産業を題材にしています。主人公が社会人であれば、何かの産業に属しているので、基本的にはどこかの業界について描いているんです。面白いマンガを制作したとき、その業界の企業や人がサポートしてくれるような作品になることが重要です。

中野 マーケティング業界として、多くの人にマーケティングが応援されるようなマンガを多く作り出せたらいいですね。

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