サステナビリティ特別対談 #01
日本最大級の産後ケアホテル「マームガーデン葉山」、サステナビリティ×ビジネスの舞台裏にファミマ CMO足立光氏が迫る
アジア圏で「産後ケア」の取り組みが遅れている日本
足立 出産後にお母さんが体験する不安やトラブルというのは、具体的にどのようなものですか。
足立 光 氏
斎藤 日本において、産後は里帰りをするか、自分たちで頑張るかの2択しかないのが現状です。そもそも赤ちゃんを産むという「出産」自体が交通事故で2カ月のダメージを負った状態と同じで、産後は少なくとも1カ月間の養生が必要だと言われています。
そんなタイミングに育児や家事を頑張ってしまうと、身体へのダメージをより大きくしてしまい、産後うつなど心身のトラブルにつながってしまいます。また近年では、晩婚化の影響から、身体により負担がかかる高齢出産が増えています。実際に、出産した女性の7人に1人が産後うつになると言われているんです。
では、里帰りをすれば、問題が解決されるのかと言えば、それが母親にとって幸せか否かという話もありますし、そもそもその選択肢を取れない人も多くいます。
足立 日本以外の国で、産後の状況はいかがでしょうか。
斎藤 同じアジア圏では韓国、台湾、中国が産後ケアの先進国だと言われています。すでに台湾では、産後ケア施設を使うことが当たり前で、使わないほうが少数派だと言われるほどです。
足立 台湾における産後ケアは、具体的にどのような内容なのでしょうか。
斎藤 台湾はじめアジア圏で一番流行しているのは、当社と同じ宿泊型の産後ケア施設です。そこで約1カ月間を過ごしますね。滞在している期間は食事が出ますし、家事をする必要がありません。それに加えて、赤ちゃんの面倒を見てくれる機能や、お母さんの心身と授乳のケア、育児のレクチャーなどを行うサービスがあり、産後の家事と育児の両方を支えられる環境が整っています。
足立 それに対して、日本が遅れているのはなぜでしょうか。
斎藤 日本では、昔からの文化のせいか、産後に対する考え方が違うんです。韓国、台湾、中国では、学校教育や家庭教育の段階で、出産はすごくダメージを負うから産後に母親をケアしなければいけないと習うんです。それらの国では、もともと家族がすごく真剣にケアをしていましたが、産後ケアが始まってからは、もっと広めていこうという風潮になり、ここ15年くらいで急速に普及していきました。
足立 日本には「マームガーデン葉山」以外にも、産後ケアを運営しているホテルや施設はあるのでしょうか。
斎藤 ほとんどないですね。あるとしても、自治体や個人で公費から補助をもらいながら運営している規模の小さな施設ばかりです。そのため、産後ケア施設を使いたいと思っても、受け皿となるパイが非常に少ないのが現実です。