音部で「壁打ち」 – あなたの質問に答えます。 #特別編04

マーケティング人材の育成に必ず求められる大切な視点とは?【音部大輔氏×久保田達之助氏 対談】

 

人間理解と多義的な視点を身につけよう


―― マーケターを目指す学生が、学生のうちにしておくべきことはありますか。

久保田 大学にはいろいろな先生がいるので、気になることは積極的に聞きに行ったほうが良いと思います。また、マーケティングはリアルな世界なので、街中に教材がたくさん落ちています。先ほどもお話ししたように、通学中に広告を見る、お店に行ったときにもこの商品は何を伝えようとしているのか、どのように販売しようとしているかを考えるなど、常に企業側の意図を意識して過ごしてもらえたらと思います。



音部 その通りだと思います。さらに、マーケティングもブランディングも多義的であるので、ひとつの視点だけではなく、複数の視点から考えてみることが大事です。ひとつの意義しか見えないという場合は、「どのような意図や目的、状況だったら、この広告が最強の手段になりうるのか」、あるいは「最低の手段や有害なものになり得るのか」など、別の問いを立てて考えてみると、視点をストレッチするトレーニングになります。

もうひとつ伝えたいのは、マーケティングはつまるところ人間理解であるということです。そのため、人と交わり、人から学んで理解することが大事です。人と交わることが苦手な人は、映画や漫画を見ても良いかもしれません。その中には人間描写があるので、そこから学ぶことができます。特に何年も前の作品なのに未だに見られている名作には、間違いなく人間の機微が入っているので、勉強になるでしょう。

――ちなみに、音部さんが人間理解の参考にしている作品はありますか。



音部 長く読まれている文学作品はいずれもとても有意義です。年によって評価は様々ですが、大河ドラマなども有益です。現在放映中の大河ドラマは徳川家康が主人公ですが、実在していた人物にもかかわらず、その捉え方は人によって全く異なります。徳川家康こそが最善のリーダーだと思う人もいれば、むしろ悪人だと考える人もいるし、最強だと思う人もいれば、あいつは何もやっていないと思う人もいます。同じ人物なのに、評価が分かれるのです。

ストーリーも同様で、過去の徳川家康に焦点を当てた作品と同じシーンを描いていても、その描き方は作品によって全然違います。大河ドラマは、同じ人物や歴史的な事象を違う角度で描くことが多いので、人間理解と多義性のどちらも学べるんですよね。

久保田 お話を聞いていて、私もひとつ浮かびました。長く芸能界で生き続けているタレントさんの話は、すごく勉強になります。たとえば、アイドルグループの嵐に所属していたメンバーは20年以上も活動を続けていて、老若男女にたくさんのファンがいます。その理由を考えてみると、ブランドに役立つ視点が得られるでしょう。

―― 今日は、お二人とも素晴らしい話をありがとうございました。

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