TOP PLAYER INTERVIEW #44

スープストックトーキョー取締役に工藤萌氏が就任、「離乳食炎上」対応に関わり転職を決意

 

「価値づくりユニット」でブランド価値の向上に貢献


――スープストックトーキョーでは、どのような領域を担当するのでしょうか。

 現在、取締役は私を含めて3人で、創業者遠山(代表取締役会長)の想いをしっかり受け止めながら、代表取締役社長の松尾のパートナーとして経営を担います。加えて、兼任という形で「価値づくりユニット」のユニット長も務める予定です。

 価値づくりユニットは、スープストックトーキョーのブランドをどう構築していくかという戦略や戦術を司るチームです。それによって、柱であるブランドの価値をより太くし、ビジネスチャンスの拡張を図っていきます。

――工藤さんにとって飲食業は初めての経験になると思います。新しい挑戦にあたって期待や不安はありますか。

 もちろん不安はあります。これから新たに学ばなければいけないこともたくさんあるでしょう。ただ、ブランドを軸にした経営という視点では、これまで経験してきた仕事と大きく変わらないと思っています。

 資生堂からユーグレナに移ったときも、組織の大きさや仕組み、ビジネスモデルなどが想像以上に異なり、最初はとても大変でした。しかし、どのようなバリューチェーン(価値連鎖)で成り立ち、それに紐づく人材のケイパビリティが異なるなど多くの学びがありました。今回も異なる業態を経験することで、自分の引き出しが増えるという楽しみがあります。
 

ユーグレナでは、マーケティングから経営へ


――工藤さんは「社会的に意義のあることを実行したい」という想いを強く持っていると思います。その背景を教えてください。

 その質問に答えるために、私がこれまでのキャリアの中で考えてきたことを紹介させてください。私は新卒で資生堂に入社し、そこでマーケターとして最も長くキャリアを積みました。そこで、マーケティングには人の認識や行動を変える力があることを学び、社会に対する意義や影響力を感じていました。

 転機となったのは2018年、子どもが産まれたときです。人間は出産というこんなにも大変な思いをして子孫を残してきたのかという驚きと感謝の気持ちを抱くのとともに、人類すべてが「自分の子ども」のように可愛くて仕方がないという不思議な感覚が芽生えたんです。そして、そんな可愛い子どもに少しでも良い未来を残したいと思いました。

 特に、現代のように世界が分断されて一部の人だけが満たされている社会を50年後、100年後に向けて良い方向に変えたいと強く思っています。ありがたいことに、私には社会に影響を与えるマーケティングという手段があります。それを大量生産、大量消費を促すツールではなく、売れれば売れるほど社会が良くなるように活用していきたいと考えたのです。そして2019年8月、サステナブルな社会の実現を目指すバイオテクノロジー企業のユーグレナに転職したのです。



――ユーグレナでは、どのような事業を担当してきたのでしょうか。

 入社当時、ユーグレナにはマーケティング部門がありませんでしたので、その立ち上げを行いました。その後、ブランドの整理と確立、ポートフォリオ戦略の立案などを担いました。各ブランドを強くしていくために、マスターブランド戦略をとる提言をまとめて実行を担ったほか、ヘルスケアカンパニーのCo-カンパニー長として通販/ECチャネルや流通チャネルなど、ヘルスケア事業の成長にも力を入れました。

 ユーグレナではマーケティングを行うために入社しましたが、その戦略をより有機的に動かしていくために経営にも必然的に携わるようになりました。ユーグレナの経営層は狂気すら感じるほどの熱い想いで社会を変えようとしています。その中で、想いが伝播して仲間が集まっていく様子などを目の当たりにしながら、社会に問い続ける重要性など多くのことを学びました。

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