広報・PR #10

ビッグモーター不正請求問題の社長会見、広報のプロが見ると「どこがダメだったのか」

 

危機管理広報の失敗を避けるために


 危機管理広報の取り組みは、企業の信頼性を維持し強化する上で極めて重要です。速やかに正確な情報発信が求められ、具体的には問題の確認・情報収集、情報の公開、原因分析の3つのステップが必要となります。しかし、「それらが重要なのは分かっているができない」というジレンマを抱える企業も少なくありません。

 その打破のためにはいくつかの対策が有効です。仮に自社で今回のような不祥事がおこってしまった場合の広報対応に必要なポイントを紹介します。

事前計画と準備
 危機対応プランの整備と経営陣や従業員へのトレーニングが必要です。具体的な危機対応のシナリオを作成し、定期的な訓練により対応能力を高めます。

透明なコミュニケーションの強化
 企業内外のコミュニケーションラインを強化し、第三者の意見も積極的に取り入れます。開かれたコミュニケーションは、信頼性の向上と誤認の解消に寄与します。

技術とシステムの活用
 情報管理システムの導入により、情報発信の迅速化と効率化を図ります。正確な情報をタイムリーに共有することが、危機対応の質を高める要素となります。

信頼関係の構築
 ステークホルダーとの対話を強化し、透明性の高い経営を推進します。相互の理解と信頼の深化により、危機が起こったときにおける信頼性の維持が可能になります。

企業文化と倫理観の強化
 共通の倫理観の共有と徹底により、企業全体として誠実な対応を重視する文化を築きます。倫理観の強化は、長期的な信頼関係の構築に繋がり、経営層の強いリーダーシップと組織全体の意識改革が危機管理広報の成功の鍵となります。リーダーシップが強いことは、経営者が率先して方針を明確にし、従業員に対して指導と支援を行うことです。その全社員が共通の理念を理解し、具体的な行動に移す努力が必要です。このプロセスを通じて、長期的な組織文化が形成されるため、日常業務における倫理的な判断も自然と高まります。

 また、危機管理広報は単なる一過性の対応ではなく、企業の「信頼性」と「ブランド価値」を高める持続的な戦略として位置づけるべきです。信頼は、一度失墜すると回復するために時間がかかりますが、経営層と従業員が一体となって危機管理に取り組むことで、企業イメージの強化と信頼関係の回復が可能となります。長期的な視点で危機管理戦略を構築し、組織全体でその実践に励むことが、企業の持続的な成長へと繋がるのです。


Agenda note 編集部撮影
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