TOP PLAYER INTERVIEW #46

「ドMになって困難な道を選ぶ」オリオンビールCMO 湖東彰彦氏のマーケティング論

 

沖縄のプライドを大切に名護での生産にこだわる


――沖縄は、日本の本土とは土地柄や歴史的背景に大きな違いがありますが、沖縄ならではの課題はありますか。

 一番大きな課題は、輸送費です。我々はチューハイ等の一部製品を除いて名護ですべての商品を生産しているので、県外にしても海外にしてもそこから輸出しています。寡占市場において、その輸送費はビジネスにおいて非常に痛いコストなんです。

 オリオンビールでは沖縄のプライドを背負って、創業からずっと沖縄で主力製品を製造・輸送してはいるものの、それがPL(損益計算書)上の足かせにもなっているのは事実です。その点、大手のビール企業は国内や海外にいくつもの製造拠点を持ち、輸送費を削減しています。

 だからといって我々は沖縄のブランドを最大限に生かすためにも、地元の雇用創出に貢献するためにも、安易に県外や海外に製造拠点をつくるような発想に至るわけではありません。沖縄という地域を武器として最大限活用しながら、現状のビジネス課題を解決できればと思います。

 たとえば、市場に出ているクラフトビールはすべてプレミアム価格で売られています。オリオンビールもそうした高価格帯にチャンスがあるのではないか、その価格帯を正当化できるような沖縄ならではの価値は何かと、検討しています。
 

常に困難な道を選び続ける湖東氏の想い


――湖東さんがオリオンビールで成し遂げたいことは何でしょうか。

 オリオンビールの仕事を通して、沖縄に貢献したいと思っています。この沖縄でしか得られない体験をマーケティングして、オリオンビールの成長にもつなげていきたいと考えています。

 世界全体がアフターコロナとして動き始めるなか、日本もインバウンド需要も増えていますが、ほとんどが日本の大都市圏にお金が落ちる仕組みになってしまっています。そこだけではなく、沖縄を含め日本の地方にはたくさんの宝が眠っているので、まずは沖縄という宝の山をマーケティングしていきます。それが結果的に、日本の他の地域にも関心を持ってもらえるきっかけになればいいなと思っています。

 あとは、オリオンビールは大手4社と比較すると、従業員数も売上規模も小さな会社です。ただ、小さな会社だからこそ、大手では取り組まないようなことをどんどん考えて実現していきたいですし、沖縄のさまざまな企業とも積極的に連携していきたいと思っています。
  

――今回のインタビューを通して、湖東さんのマインドはマーケターよりも経営者に近いと思いました。ご自身は普段、どのような視点でお仕事されているのでしょうか。

 私はマーケティング自体すごく好きですし、私自身はいちマーケターだと思っています。ただ、マーケティングとは何かと言えば、結局はビジネスやそのカテゴリーを創造していくことなのです。そのような意味では、ビジネスプロデューサーのような立ち位置だと思っていますね。

 最近では、マーケティング出身の経営者も多いですし、私も将来的にチャンスがあればマーケティングに軸足を置きながらも、それ以外の部分を含めたビジネス全体への貢献を図っていきたいと思っています。

――最後に、読者やマーケターに向けて何かメッセージをいただけますか。

 たった一度の人生なので、日々チャレンジし続けてほしいと思います。そうでなければ生きていて面白くないですし、成長も止まってしまいます。ドMになって困難な道を常に選ぶことで、自分自身の存在意義が構築されてくると思っています。私もまだまだ存在意義を構築している最中なので、まずはオリオンビールを通して沖縄の魅力を多くの人に伝えていければと考えています。
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