広報・PR #11

競争が激化する大学、生き残りをかけた「イメージ戦略」の進化と挑戦

 

大学のタイプ別「イメージ訴求」の方向性


 大学イメージの変容が示すように、大学の役割や存在意義は時代と共に進化しています。この変遷を理解した上で、大学の情報発信やPR活動を行うことが重要です。心に響く情報伝達のためには、大学が社会や学生にとってどのような価値を持つのか、そしてどのように変遷してきたのかを的確に伝えることが求められます。

 特に、大学の情報発信においては、「見せる」だけでなく「伝える」ことの重要性が増しています。単なる情報提供や過去の実績のアピールだけではなく、未来に向けたビジョンや取り組み、そしてその実現に向けた具体的な行動や施策が求められます。これは、学生や保護者、産業界、そして地域社会全体への約束であり、大学の存在意義そのものを示していると言えるでしょう。そして、それぞれの大学が持つ「独自性」を明確にし、それを通じて社会に対してどのような価値を提供しているのかを伝えることが、イメージ向上のカギとなります。

 前述のように、大学はタイプごとに異なるイメージの変容を経験してきました。それらを踏まえて、それぞれの大が取るべき「イメージ訴求」の方向性を紹介していきます。

総合大学:
 総合大学の近年のイメージ変容の中核は学際的・国際的な交流の増進による新たな学習空間の創造にありました。国際交流プログラムや交換留学制度の拡充を強調したり、複数の学問領域でのコラボレーションを紹介したりすることで、総合大学としての独自性と深みを強調できます。

工業系大学
 産業界との連携の中で、実際に生徒たちが関わった現場の技術開発や問題解決のエピソードを紹介することで、社会で通用する実学の重要性を強調できます。さらに、国際的な技術コンペティションやセミナーへ参加している実績をアピールし、国際的なリーダーシップを打ち出すことができます。

地域密着型大学:
 地域との協力のもと、伝統や文化を学びながら新しい価値を生む取り組みを紹介できます。また、地域の産業や社会問題をテーマにした研究やプロジェクトを通じて、地域とともに未来を考える大学であることのアピールも可能です。

芸術大学:
 独自のアートイベントや展示会、そして国際的なアートコンペティションへの参加や受賞歴を紹介することで、芸術の領域でのリーダーシップを打ち出せます。さらに、現代社会や技術とアートの融合を試みるプロジェクトやワークショップを紹介し、時代の先端を走る芸術大学であることを訴求できます。

 このように大学のタイプによって担う役割が異なるため、訴求するイメージが異なることがわかるでしょう。ここで、架空の例として、地方の芸術大学のイメージ変革プロジェクトを考えてみます。
 

地方の芸術大学(架空)のイメージ変革


【地方の芸術大学(架空)がイメージ変革を行うケースを想定】

背景
 この芸術大学は、かつては地域における伝統的な芸術の中心地としてのイメージを持っていましたが、近年の技術の進歩に合わせて、デジタルアートやテクノロジーと結びついた新しい芸術分野へのシフトを試みている。

PR戦略の変更
 地域の中高生や一般市民をターゲットに、デジタルアートの展示会やワークショップを主催しました。特にVRやARを利用した体験型の展示は大きな話題となり、大学の新しいイメージを地域社会に浸透させる大きな一歩となりました。しかし、伝統的な芸術のファンからの抵抗が強かったうえ、一部の学部の学生が置き去りにされたように感じてしまいました。

具体的な施策
・デジタルアートの講座やワークショップの無料開放を行い、新しい分野への理解を深める機会を提供。
 ・地域の中小企業やアートスクールとの連携を強化し、実際のビジネスや教育現場でのデジタルアートの応用例を学外で展開。
・伝統的な芸術とデジタルアートの融合を試みるプロジェクトを立ち上げ、古いイメージと新しいイメージの橋渡しを図る。

 新しい技術やトレンドを迅速に取り入れることは重要ですが、その一方で伝統的な芸術を疎かにしては危険です。大学のイメージ変革にはバランス感覚が求められます。大学が自らのアイデンティティを見失わず、同時に新しい方向性を模索していくことが、今後の大学の発展にとって不可欠です。

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