広報・PR #11

競争が激化する大学、生き残りをかけた「イメージ戦略」の進化と挑戦

 

ブランディングと本質的な価値の両立の重要性


 大学のイメージの変遷と、今後の方向性を紹介してきましたが、実際には同じタイプ内では多くの大学が類似したPR活動を行っているのが実態です。そのため、社会や学生からは大学の違いがはっきり見えているわけではありません。この問題の解決には、以下の策を提案します。

独自性の強調:
 各大学が持つ歴史、文化、特色をベースにした独自のストーリーを強調します。単なる施設やカリキュラムのPRではなく、その大学ならではの体験や価値を伝えることで、同じタイプでも他大学と差別化を図れます。

地域との連携強化:
 地域社会との密接な関わりを持つことで、大学の存在意義を具体的に示せます。地域の課題を解決するプロジェクトや、地域産業との協働を強化で、独自のPRポイントを築けるでしょう。

学生・卒業生の声の活用:
 現役学生や卒業生の経験談や成功事例を前面に出すことで、具体的な成果や魅力を伝えられます。学生の生の声は、未来の学生や保護者にとって非常に説得力がある要素です。

新技術の活用:
 バーチャルツアーやVR・ARを用いたキャンパス体験など、新しい技術を導入して魅力的なPR活動を実施することで、他大学との差別化を図れます。

 とはいえ、上記の情報が多くの広報担当者に共有されれば、同じような施策を行う「競合」が増えてしまいます。ただし、基本的なアイデアが同じであっても、具体的な取り組みの内容や方法を深化させることで解決できるでしょう。たとえば、地域との連携強化では、その地域独特の文化や歴史を活かしたプログラムを展開することが考えられます。

 各大学が持つコアバリューやミッションを明確にし、それをベースにした活動で、他の大学とは異なる独自性が生まれます。また、新しい施策や活動も継続的に見直し、さらに革新していく姿勢が必要です。追随する大学の増加は、ひとつの施策が成功している証でもありますが、その施策に固執せず常に次のステップを考えることで差別化を維持できます。

 学生、教職員、地域住民など、すべてのステークホルダーを計画や実施に参加してもらうことで、多様な意見やアイデアが生まれ、独自の方向性を見つける手助けとなります。そして、施策の効果を定量的に分析することで、どの部分が他の大学と異なる結果をもたらしているのかを把握し、それをさらに強化することで独自のイメージが訴求できます。

 今回は大学のイメージ戦略について紹介しました。商品やサービスが飽和状態で差別化が難しい時代、企業のマーケティングや広報・PR活動でも応用できるのではないでしょうか。
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