Agenda note注目のスタートアップ連載 #03

選挙という固いネタを扱う選挙ドットコムが月間1200万ユーザーのメディアに成長できた理由とは?【イチニ 代表取締役 高畑卓氏】

 

月間ユニークユーザー数が1200万の選挙ドットコム


 福田さんが立候補した当時は無所属だったので、誰もが勝てないと思っていました。ところが大逆転で当選したことが話題となり、翌日のYahoo!ニュースのトピックス入りも果たしました。ネット選挙をサポート していたのが私だったので、ほかの政治家からも手伝ってほしいというオファーがたくさん入るようになり ました。そのような依頼を引き受けていくうちに、気がついたら企業向けのWebマーケティング支援会社ではなく、政治家向けの支援会社に変わっていました。

 企業の場合は利益を最大化することが目的ですが、政治家はいかに票を入れてもらい選挙で当選するかが重要です。そして世の中に対して、こんなことを実現したいという大義を持っています。実際、川崎市長となった福田さんも当選後、中学校で給食を始めたり、幼稚園の待機児童を改善させたりして、市民の皆さんから感謝されています。

 それから、日本は選挙に行く人が少ないという課題があり、それは絶対に解決したほうがいいんです。私はいろいろな政治家や立候補者のサポートをしてきましたが、投票率はなかなか上がらないですし、政治に参加する人もそう簡単には増えません。だからこそ、自分の生涯をかけて投票率を上げるためのチャレンジをしたいと思いました。そして、有権者にとって政治や選挙がわかりやすくなるようなサービスをつくろうと決心し、選挙ドットコムを立ち上げる構想へと繋がっていきましたね。
  
選挙ドットコムの公式サイト

 選挙ドットコムは、例えるなら「食べログ」や「ぐるなび」のような発想から生まれたサービスです。政治は、その選挙区の人でも自分が住んでいる地域の議員が誰かわからないことが多いので、情報がわかりやすく比較しやすいサービスが必要だと思いました。

 さらに、ネット選挙解禁によって政治家も自らのSNSなどで発信できるため、政治家のインターネット上での情報発信を助けるツールとして「ボネクタ」を始めました。ボネクタは政治家のブログ制作や検索エンジン対策などが揃っていて、選挙ドットコムなどからも情報を閲覧できる仕組みになっています。
  

 2023年4月の統一地方選挙では、選挙ドットコムの月間ユニークユーザー数が1200万を超えました。選挙情報のポータルサイトやプラットフォームは世界的に見ても数が少なく、世界で見ても2番目ぐらいの規模に成長しました。新聞購読をする人が減り、インターネットの情報で投票先を選ぶ人が増えてくると、政治家もインターネットでの発信を無視できなくなるのです。

 有権者からすると、選挙ドットコムを見れば立候補者のことが簡単にわかるので、「この人と私の考えの相性が良さそうだから投票しよう」と行動につながるんです。また、私としてはひとりの国民として政治が信頼を取り戻して欲しいという思いもあります。私自身が家族を持ったことで日本の将来についても考えるようになり、子どもたちにとってより良い社会を残したいという思いも 芽生えました。

 今、振り返ると、ひとつ良かったと思うことがあります。それは政治関係者の家族でもなく 特定の政党とも繋がっていない、ただの普通の人(少しネットに詳しいビジネスマン)だった ことです。もし政治的な考えを強く持った人が選挙ドットコムを運営しているとしたら、ユーザーからすると何か情報を操作されそうで怖くないですか?

 私が 中立や公正の立場を守ることを意識して進めていくからこそ 実現できる事業なのです。この事業を始めて年数が経つにつれて、より真面目に取り組まなければいけないと責任感を強く感じるようになりました。

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