Agenda note注目のスタートアップ連載 #03
選挙という固いネタを扱う選挙ドットコムが月間1200万ユーザーのメディアに成長できた理由とは?【イチニ 代表取締役 高畑卓氏】
有権者と政治家のギャップを補完した選挙ドットコム
――なぜ、月間1200万ユーザーが利用するメディアに成長できたのでしょうか。
もともと 需要もあり大きなイベントでもある選挙ですが、ネットにおいては存在が未成熟で伸びしろがありました。そしてそれを一気に加速させたのは新型コロナの影響です。
外出が制限された1、2年の間も選挙は 不要不急ではなく、通常通り開催されていました。政治家は誰もいない街頭でマイクを持ち、チラシを配っていました。有権者の多くは自宅でスマホやパソコンで情報収集している人が多かったので、選挙ドットコムなどインターネット上で選挙や政治情報を発信するサイトへのアクセスが殺到したのです。
コロナ前後で選挙ドットコムのユーザー数は倍以上になり、利用する政治家の数も倍増しました。政治家は選挙ドットコム上で情報発信ができるので、コンテンツも次々に生成されて、さらに検索エンジンやSNS経由で利用者が増えるという良いスパイラルに入りました。
ネット選挙解禁以前の選挙運動は、炎天下で喋ったり、駅前でチラシを配ったりなど、方法が制限されていることが課題でした。また、選挙運動は朝8時から夜8時までしかできないため、その時間に働いている多くの有権者は街頭演説を聞けません。
そのため、伝えたいことをわかりやすくまとめた 政治家のページを発信できるように するなどして、そのギャップを選挙ドットコムで解決したいと考えました。ビジネス的には、ネット選挙解禁以前はマーケットがゼロの状態だったので、これから伸びていく新たなマーケットであるという視点もありました。
――選挙ドットコムの競合はどこになるのでしょうか。
選挙ドットコムの競合はマスコミやメディアかも知れません。我々はボネクタを通じて、候補者が自ら情報を発信するのでデータベースに近いと考えています。そのような意味では、運営する側としては右や左などの政治思想への忖度は一切ないので、フラットに運営することが重要なポイントだと思っています。
また、 プロダクト開発などで安易に最新技術に飛びつかないことも大切にしています。有権者も政治家も利用しているユーザーの年齢層は若くはないので、スマートフォンでも見やすく操作しやすいなど、ユーザーやターゲットにとって適度なソリューションを用意することが重要です。月間1200万ユーザーが使うことを考えると、スタンダードな仕組みのほうがユーザーはストレスなく必要な情報を入手できます。
政治家は効率的な方法で、有権者にアプローチできる
――ボネクタとは、政治家にとってどのようなことができるサービスでしょうか。また、どのようなことをメリットとして感じてもらっていますか。
ボネクタは、政治家のインターネット上での情報発信をサポートするツールで、ホームページやブログなどCMS(コンテンツマネジメントシステム)のような役割を持っています。ホームページをつくるとなると数百万円もかかることもありますが、ボネクタでは月々3900円くらいから自由に更新できる候補者の専用ページを利用できます。
そこで政治家が投稿したコンテンツが、ニュースメディア などに掲載されるため、検索エンジン対策やSNS連携など含めて包括的にインターネットに情報発信ができます。
それから、日本では我々のみが提供している、クレジットカードを使ったネット献金システムもあります。お金が無い人でも志があれば周りの支援を受けて選挙に出ることができる、この仕組みはとても重要なんです 。
また、広告会社のような機能もあり、インターネット広告を出すときのサポートもしています。国内の主要媒体において、特定のターゲットに適した広告を表示する「選挙区ターゲティング広告」も行っています。政治に関する広告審査は非常に厳しいですが、政治家はあまり詳しくないので、我々はそのサポートをしています。
さらに、eラーニングの機能も備えており、政治家向けに公職選挙法やSNSのアルゴリズムなどを教える勉強会も無料で開催しています。このような機能やコンテンツが好評で、多くの政治家に利用してもらえるようになりました。