TOP PLAYER INTERVIEW #53

「マーケティングがしんどいな」と思っている人へ【シャープ公式X運用担当 山本隆博】

 

現代のマーケティングに逆行する“手売り”のような商売


―― X運用はマーケティングの一部を担っていると思いますが、山本さんの考えるマーケティングについて教えてください。

 今、私はマーケティングをしている気は一切ありません。テレビやデジタルの広告が嫌になってSNS運用を始めたので、そもそもマーケティングと捉えていないのです。そこで、一切「数」を度外視しています。

 たとえば、商品を買っていない人よりも買ってくれた人と仲良くしようとしていますし、インプレッション数やリポスト(旧リツイート)数を気にするよりも、投稿に反応してくれる人との関わり、個別のエピソードを重視しています。

 2022年に開催されたマーケティングカンファレンス「ネプラス・ユー大阪」でも話しましたが、昔からよく「狩猟より農業をしている」と言っています。ECサイトでモノを効率よく売ることよりも、私は一人ひとりに対して“手売り”をしようとしています。それはあまりに非効率で、マーケティングの視点から見れば、アホなことをしていると見えるかもしれません。

 今後もおそらく、世の中はモノを売り買いすることに対して効率性を求めていくと思います。ただその中で、効率の利便性と非効率の希少さ二極化が進むのではないかと考えています。その点で、私が行っている“手売り”のような商売のあり方は、もう少し注目されていくのではないでしょうか。

 それは買うほうにも同じことが言えるんです。「あなたはどちらで買いますか?」という選択肢になります。幸か不幸か私が今いるのは大きい会社なので、何にせよ効率を求めるのが当たり前になっています。その中で、私が効率と真逆のことを細々とやり続けるのだと思います。また、そういう人がいてもいいのではないかという程度にのんびり捉えていますね。
  シャープの公式X(旧Twitter)アカウント「SHARP シャープ株式会社」

――Xのアカウントを通じて築かれたブランドイメージは、シャープの企業理念や事業と連携しているのでしょうか。

 企業理念に準じてXの「SHARP シャープ株式会社」アカウントができたわけではないので理念と合致しているかは、正直わかりません。さらに、取り組んでいることは意識の上でマーケティングではないので、そもそも何か目論見や目的があるわけでもありません。ただ、アカウントが10年以上存続しているという事実は、ひとつの答えになっているのではないでしょうか。

 シャープの公式アカウントには毎日「シャープの製品を使いました」「シャープの製品を購入しました」というリプライをたくさんいただくので、販売に関与しているという実感はあります。その度に、一人ひとりに対して「ありがとうございました」と返事をしています。ただ、具体的に会社の売上にどのくらい寄与しているかはわかりません。

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