TOP PLAYER INTERVIEW #53
「マーケティングがしんどいな」と思っている人へ【シャープ公式X運用担当 山本隆博】
「誰が言うか」の「誰」に必要なこと
――ブランドの一貫性を保ちながら、フォロワーとの共感を高めるために何か意識されていることはありますか。
シャープというブランドの一貫性は、私が保っているわけではありません。少なくとも、シャープブランドに合致するようにコミュニケーションを取ろうとは一切考えていないですね。むしろ、ブランドの一貫性から半歩はみ出たようなバラバラ具合がブランドにある種の奥行きをもたらし、より現実のお客さまや世間のカオスに近づけると思っています。
ただ唯一、一貫していることは「私という同じ社員がずっと発信している」ことです。インターネット上の情報があふれかえっている中では、「誰が言うか」がものすごく重要になります。そのような意味で、会社という組織に実在するひとりの人間が、毎日いろいろなことを喋っているということが、「誰が言うか」の「誰」につながっていると考えています。
―― 公式アカウントの「中の人」の異動や退職に伴い、投稿内容が変わってしまうリスクについてはどのように考えていますか。
リスクなんてないですよ。 アカウントの“中の人”が変わる事態になったらどうするのかと、しきり同じような質問をされるのですが、回答としては「シャープさん」は必ずしも私である必要はないということです。「誰が言うか」の「誰」は、複数いていいと思います。
深夜に放送している、もはや伝統といってもよいラジオ番組の『オールナイトニッポン』は、まさにいい例のひとつだと思います。『オールナイトニッポン』は、リスナーと近い距離感で放送するという聴衆スタイルをいち早く編み出したラジオ番組です。パーソナリティーは頻繁に変わっても、あの時間帯に決まって醸し出される「親密さ」については、変わらずキープされていますよね。
これはXのアカウントでも同じことが言えるのではないかと思います。「SHARP シャープ株式会社」のアカウントは、お客さまと企業との距離が近くなるために間を取り持つひとつの“容れ物”だと考えれば、その中で喋る人は必ずしも同一人物である必要はありません。自分の考えに基づいて、多少たどたどしくてもいいからお客さまと直接喋る。ひたすら個別のコミュニケーションを取ることを続けていけばいい話なのだと思います。