TOP PLAYER INTERVIEW #59

味の素が餃子の張り付くフライパンを3500個も回収 「冷凍餃子フライパンチャレンジ」で目指した生活者目線のコミュニケーション

 

生活者の「参加している感」を醸成したロスのないコミュニケーション


――SNS投稿が大きな話題になり、これだけのプロジェクトに発展した要因はどこにあるとお考えですか。

本田 PRという観点からいくと、今回の件は我々が仕掛けや戦術的な工夫をする前に、すでにものすごい話題になっていたという状況でした。力技で話題化させようとするよりも、ある程度盛り上がったり、兆しがあったりするものをいかに増幅させるかという考え方が、広告とは違う「PRならではの発想」です。その意味で、最初から、これはポテンシャルの高いお話だと感じていました。だからこそ、きちんとプロジェクト化して、予算をある程度かけるべきだと判断しました。

高宮 もともとの「餃子」という食べ物のコンテキストが太かった、つまり世の中の関心事であるというのが大きな理由だったと思います。多くの人が「どうしたらおいしい羽根つき餃子を焼けるのか」に興味があったのです。だからこそ、今回のモメンタムは自分ごと化していただきやすかったのではないでしょうか。
 
I&CO Tokyo共同代表
高宮 範有 氏

あとは、味の素冷凍食品さんがタイムリーに対応されていたことも大きかったと思います。一般のお客さまの投稿から比較的すぐに声をかけて、その後もほぼロスのないコミュニケーションになっていました。ユーザーからすると「参加している」というグルーヴ感を出せたことも話題化した一因だと思います。

―― プロジェクト全体において特に意識したことは何でしょうか。 

本田 今回のプロジェクトは生活者の方から始まった話ですし、私の言葉でいうと「ナラティブ」なアプローチです。企業主語でプロジェクト化するとはいえ、フライパンを送ってくださった人たち、それを見ている人たちからどう見えるかについて強く意識しました。
  

これが、味の素冷凍食品さんが主役になりすぎて、お客さまから「いろいろなプロモーションを始めた」みたいに見えると一気にダメになるわけです。高宮さんがディレクションした広告のクリエイティブや文言、プロジェクトサイトの設計、テクニカルな面を含めて、意思決定の指針としたのは、関わってくださった生活者の皆さんの視点です。

企業側で100%コントロールしてコンテンツを作って完璧なものを見せようとしたり、いろいろ言われたくないからリスクヘッジするような意識が働いたりすると、生活者が口を挟む余地のないものになってしまいます。さじ加減が難しいところですが、余白を残すことが肝ではないかと思っていました。
  

高宮 研究開発に生かすためにフライパンを集めているというチームの皆さんの動機がすごく純粋で、そもそもそれはずっと味の素冷凍食品さんがやられてきた「永久改良」というスローガンに則った取り組みだと感じていたので、個人的には「永久改良」という概念がきちんと届けばいいなと思いました。そういった企業姿勢が伝わることで、ブランドとしての資産が積み重なっていくはずだと思っています。
  
集まったフライパンを一つ一つ3Dモデル化しSNSで話題となった、「冷凍餃子フライパンチャレンジ」プロジェクトサイト

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