業界人間ベム #特別寄稿 2024年の広告マーケティング業界予測
【2024年 必読】日本のデジマを創った男が予測する7つの変化
2024/01/10
広告業界で40年以上活躍し、自身のブログ「業界人間ベム」ではデジタルマーケティングに関する知見を継続して発信している横山隆治氏。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムを起案し、同社の代表取締役副社長に就任。その後、ADKインタラクティブの事業立ち上げやトレンダーズ 社外取締役を務めるなど、インターネットの黎明期から日本のデジタルマーケティングを牽引している。そんな横山氏は、「2024年の広告マーケティング業界」をどうみているのか。Agenda note特別寄稿として、2024年の展望を語ってもらった。
予測1:広告主自身によるAIクリエイティブのトライアル
私が2023年に上梓した書籍『2030年の広告ビジネス』では、「AIは広告ビジネスのコアであるクリエイティブを直撃する」と書いた。そしてAIによるクリエイティブは、広告主自身がコンサルにサポートしてもらいながら始めるだろう。つまり、エージェンシーより先に広告主によるトライアルが始まる。また、AIタレントは最も始めやすい入口になるだろう。
これによって、クリエイティブファームは絶滅するかもしれない。むしろ彼らは積極的に広告主にAIクリエイティブをつくらせるサポートコンサルとしてしか生き残れないだろう。
予測2:業界構造を劇的に揺るがす買収劇の可能性
コンサルの中でもなぜアクセンチュアだけが儲からない広告領域(まずはクリエイティブ)に降りてきているのだろうか。その理由は別の機会に解説するとして、「コンサル、プランニング、エグゼキューション、そしてまたコンサルに戻るというループ」をつくるには、メディアバイイング機能の獲得が必要である。そのためにマスメディアのバイイング機能を持つ企業を買収する必然性が極めて高い。
もうひとつ予測するのも、外資系企業の動きだ。といっても、従来の外資系エージェンシーではない。彼らは日本をどうこうしようとする意欲も力もない。そうではなく、広告ビジネスに連結する可能性があり、もっとビッグビジネスをしている巨大企業が広告業界を見下ろしているという話だ。特にゲーム産業からの繋ぎ込みに可能性があるだろう。グローバルでみても、ゲーム産業にはまだ日本の優位性がある。
予測3:エージェンシーの逆襲の始まりの始まりは起こるか
旧来のエージェンシーがまだ持っている唯一の優位性は広告のエグゼキューションである。実際に広告を配信したり、放送したりしているからこそ得られるデータがある。しかし、エージェンシーはそこが宝の山であることに気づいておらず、自動最適化や次の課題抽出ができるような仕組みをつくっていない。
ここを先にコンサル系の企業にやられると、最後の領土を奪われることになる。これを分かり手を打てるかどうかはエージェンシーにとって大きな分水嶺になるだろう。なぜコンサルがメディアバイイングまで取り組みたいかについては、別途セミナーで詳しく語る。
予測4:テレビCMのクライアント層の変化によって起こること
そもそもテレビCMの出稿者がマスマーケティング型による「ファネルの一番上をまずはテレビCMで…」という企業ばかりではなくなってきた。テレビ通販は別として、初めてテレビCMを使う企業が多くなった。しかも、彼らはずっとテレビCMを使い続けてくれる広告主ではない。
「テレビ主・デジタル従」から「デジタル主・テレビ従」へ移行するなかで、広告主はテレビCMをミドルファネルでしっかり機能させなければならない。そのほうがテレビ局も単価を上げられる。現状でも持ちGRP(Gross Rating Point:延べ視聴率)がどんどん落ちて、満稿でも売上が前年比で割り込むようなことを続けているテレビ局にとって、今最も取り組まなければならないのは、「どうやってテレビCMをミドルファネルで機能させて単価を上げるか」だ。しかし、これを研究しているテレビ局の人間を私は知らない。いつでも教えてあげようと思うが、こちらから話に行くものでもないので…。
テレビCMを新たに使うようになるクライアント層が、彼らのルーティンのマーケティング活動にテレビを使ってもらう手法を獲得しなければ、テレビ局は滅ぶ。その昔はテレビが普及してマスマーケティングが成立したが、今度醸成されていくマーケティングにテレビが合わせる番だ。売り方も価値の示し方も変わるだろう。そもそもテレビは従になるのだから、主であるデジタルを熟知しないといけない。
テレビ局は今の経営陣がデジタルをバカにしてきたツケが回るか、革命的な変化を実現できるか、もう待ったなしだ。みんな私より年下なんだから…。