業界人間ベム #特別寄稿 2024年の広告マーケティング業界予測
【2024年 必読】日本のデジマを創った男が予測する7つの変化
2024/01/10
予測5:広告主が困る「出稿先や枠がない!」現象の始まり ~試される広告主~
日本の広告主は、マーケティング戦略上、最低限投下しなければならない出稿量というものをほとんど意識していない。これは広告費をマーケティング投資ではなく、コストだと思っている証拠である。欧米のマーケターは確保しなければならない投下量を意識している。当たり前だが「このくらい投下しないと目標とするリターンが得られない」と考える。日本ではコストだから「買えなきゃ買えないでいい」のだ。
さて、私はある人にお願いして「購買に最も相関する変数は何か」をいろいろ試してもらったことがある。そのとき最も購買に相関係数が高かったのは、テレビCMの累積TARP(Target Audience Rating Point:個人を対象にした述べ視聴率)とSNSの投稿量をある手法で合算した変数だった。しかも、これをグラフにしたところ最も興味深かったのは、この変数がある一定のところまで行くと急激に購買数が伸びることだ。
つまり、広告などの投下量には「これ以上はやらないと効果が得られない」というポイントの存在がデータで立証されたのだ。広告代理店の営業が「1000GRPくらいはやらないと効果はありませんよ」とかいうまったく根拠もない話とは違う。
これから急激に日本の広告主も効果の期待できる広告枠が少なくなっていることに気付くべきである。まさに広告主が試される元年が2024年かもしれない。
予測6:コネクテッドテレビCMはまだ期待に応えられず
コネクテッドテレビCMに関して、ベムはプレミアムなコンテンツに挿入されるプレミアムなCMと定義している。これが育たないとコネクテッドテレビCMは、テレビの代わりになっていかない。テレビCMが長い期間で培ったCMの挿入方法は、視聴者との和解で成り立っている。これを無視しているのが現状のYouTubeでのCM挿入法である。
パッシブ(受動的)な視聴環境のテレビCMでさえ、CM挿入に関してはデリケートなものとして考えられてきた。これに対して、アクティブにコンテンツを選んで視聴するYouTubeでの強制的なミッドロール(動画コンテンツの途中で配信される動画広告)などは、CMとしてむしろマイナスなのだが…。
さて、私が定義するプレミアムな枠へのコネクテッドテレビCMは期待されるだろうが、まだ環境が醸成されていない。売る側の期待が高すぎて単価があまりに高いのと、そもそも枠の量がテレビと比較すると非常に少ない。私が始めたテレビCMのインプレッション換算は、むしろテレビCMの到達量の多さを実感させると思う。NetflixなどでのCM枠のインプレッション数がどこまで伸びるか期待するものの、今年はまだその期待に応えられないだろう。
予測7:新たな広告枠を探せ ~改めてデジタル広告の効果検証を~
最後は予測というより、ネット広告元年の1996年からデジタル広告の携わってきたベムの提言である。
現状のスマホ上の広告の氾濫ぶりは異常である。ネット広告黎明期に「1画面にはひとつの広告枠」を推奨してきた、ベムとしては「大量に配信していればよい」とする広告主にもエージェンシーにも失望している。
前述のYouTubeでのCM挿入法といい、スマホでの広告枠氾濫といい、効果検証をしているのかと思う。マスメディアを大きく凌駕したデジタル広告には、実は効果的な枠が少ない。そこにデジタルであれば出稿しようとする広告主の意欲があって今の状況である。予測5で指摘したことはすでに起きている。広告主は、今出稿しているデジタル広告の効果検証をしっかりせねばならない。おそらくその効果は期待どおりではないだろう。
そうであれば、広告主は実際に効果のある方法を開拓せねばならない。開拓すべきは、もうテレビでもデジタルでもないだろう。
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