TOP PLAYER INTERVIEW #61

外資系広告会社、Googleを経てDeNAライブ配信「Pococha」 CMOに就任。キャリア選択で考えた条件

 

テストを踏まえ、新たなマーケティングプランへ


――これまでの広告やプロモーションの戦略で、力を入れたポイントを教えてください。

 特に力を入れたのがテストマーケティングです。ダウンロード数を瞬発的に上げるような施策はもちろんですが、たとえばテレビCMや屋外広告など複数の施策を特定のエリアで集中的に実施することで一気に認知度を上げ、それがその後の利用にどのようにつながっていくかという検証を行いました。特に地域性を利用した施策には力を入れており、各地域在住のライバー(配信者)さんをイベントにお呼びし、その地域の人にサービスをアピールしたこともあります。

 ほかにも、いろいろな角度からメッセージを発信し、ときには「皆が集まる場所」というような内容で居心地の良さを伝えたり、「何でもないことをお互いに話そうよ」と参加の気軽さを謳ったりしながら、効果の検証を重ねています。

 仮説検証を積み重ねるスタイルはPococha全体の組織カルチャーで、カルチャーの土台となる7つのバリューのひとつに「Verify quickly」があります。その価値観がマーケティング部内にも浸透しているからこそ、テストマーケティングによって有効な施策群を確保し、よりダイナミックなマーケティングを展開できるようになります。

 現在はそうした過去の施策をすべて振り返り、その成果を踏まえたうえでベストなやり方を検討することで、新しいマーケティングプランを練っているところです。
  
 

生活者にとっての「真実を探す」マーケティング


――続いて、村口さんのキャリアについても聞いていきます。まずはご経歴を教えてください。

 私はキャリアの前半は、広告会社で戦略プランナーの仕事をしていました。その内容は、生活者のインサイトを導き出し、それを企業が持っている潜在価値と組み合わせて、クリエイティブのアイデアに昇華させることです。

 企業の潜在価値とは、「安い」「おいしい」などの価値への需要だけでなく、消費者がその企業に潜在的に求めている価値のことを指します。私はそれを消費者のインサイトと組み合わせることにより、持続的に消費者の心の中に定着できるようにと考えて いました。

 たとえば、Wieden+Kennedyに所属していたときには、Facebookの日本でのブランド キャンペーンやソニーのグローバルキャンペーン、シチズン時計のリブランディングなどを担当しました。いずれにおいても、その企業がなぜ日本の生活者にとって必要なのかという「真実を探す」ことを継続して取り組んでいました。

 その中で自分自身が事業会社に入って自社のブランドを立ち上げていくことに興味を持ち、Googleに転職しAndroidのマーケティングを担当しました。当時、AndroidはiPhoneに比べて使いづらくダサいと言われ、iPhoneが高価格端末市場シェアの8割を占めていました。そこで、Androidのブランドイメージを変えるため、そのブランド価値について考えました。

 日本人は、もともと「みんなと一緒」という同質的な文化を持っています。しかし、多様化が徐々に叫ばれるようになり、自分の趣向を意識した選択を行うようになってきました。そこで、そうした時代の流れとAndroidのブランド価値をうまく組み合わせて、「みんなちがうから、世界はたのしい。」というコンセプトに基づいて施策を展開しました 。

 その結果、ダイバーシティの波にうまく乗り、皆と同じではなく、自分らしい端末としてのAndroidを持つこと自体のイメージを変化させるに貢献 できました。そのほか、Google Chromecastなどのハードウェアの立ち上げなどでも、生活者のインサイトと世の中の流れ、そしてその製品の価値を組み合わせることによって、新たなニーズを生み出してきました。

 そして、その後、ITインフラの構築や運用を行うキンドリルという会社のCMOを経て、Pocochaにジョインしたという流れです。

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