TOP PLAYER INTERVIEW #61
外資系広告会社、Googleを経てDeNAライブ配信「Pococha」 CMOに就任。キャリア選択で考えた条件
マーケティング思考を取り入れた企業変革にチャレンジしたい
―― 広告会社、事業会社のマーケターのどちらの企業も 経験されてきたわけですね。Pocochaにジョインした背景は何だったのでしょうか。
Googleやキンドリルはグローバル 企業なので、日本でできることには限界があり、全社に変革を促すこともなかなか難しい側面がありました。そうした環境に身を置く中で、企業のいちファンクションとしてのマーケティングではなく、企業の活動全体にマーケティング思考を取り入れて、変革を促していくことにチャレンジしたいという思いが生まれました。
そこで、次の3つの条件で転職先を探しました。ひとつ目は、マーケティングがコミュニケーションや宣伝など企業のいちファンクションの会社ではないことです。次に2つ目は、マーケティング課題に基づいて全社的に 変革が実行できる企業であることです。そして3つ目は、それらがある程度のスピード感をもって取り組めるよう、規模があまり大きくないことでした。
その上で特に重視 したのは、経営に携わる立場の人々が事業を通じて目指しているゴールは何かということです。私は本来のゴールは売上をあげることではなく、世の中に価値をつくり出すことや人に幸せを提供すること、社会問題を解決することだと考えています。このような 「本来のゴール」を掲げている人たちと 働きたいと思っていて、Pocochaがこれらの条件をすべて満たしていました。
Pocochaのライブ配信事業は、まだまだ世間に気づかれていない可能性を秘めていると思っています。マーケティングの仕事は需要をつくり出すことなので、今この時期が1番面白いのではないかと感じたことも転職を決めた理由のひとつです。
――村口さんは、Pococha Head of Global Marketingとしてグローバル全体も見られています。グローバル展開を行う上で大事だと考えることは何でしょうか。
グローバル市場で大事なことは、「市場ごとに戦術は変えても戦略は変えない」ということだと思います。たとえば、ナイキには「Just Do It」という全世界で共通のスローガンがあります。これは、「余計なことを考えずにとにかくやれ」という意味で、左脳的な考えに囚われず、右脳的な本能に従って真っ直ぐやれということになります。
では、日本人にとって右脳的な考えは何かというと、集団主義からの脱却です。日本人は、皆と同じスパイクを履きたがり、「ナイキの派手なスパイクを履くのは恥ずかしい。調子に乗っていると思われるのではないか」といった発想に囚われがちです。ナイキのスローガンは、そうした日本人に対して「自分らしくあれ」と言っているのです。
しかし、ブラジルに行けば、「Just Do It」は、また全然違うメッセージになります。ブラジルには「自分の未来は運命によって決まっている」と考える文化があり、左脳的に考えると「何事も運命で決まっているのだから、努力しても無駄だ」という言い訳になるそうです。そこでナイキのスローガンは、「自分の努力次第で運命はいくらでも変えられる」というメッセージになります。
つまり、グローバルへ展開するときに最も大事なことは、伝えるべきメッセージの核は変えずに、各国のカルチャーや課題をしっかり理解し、その核が受け入れられるような国ごとに戦術を適応させていくことだと考えています。